第52話 元おじさん・・・おじさんの一撃
デェーオの突き放つ白刃がエーコも喉元へと届こうとした瞬間、その間に割り込む様にビーグが盾で防ぐ!
甲高く響く金属音と共に睨み合う3人と1人、互いに間合いを取る。
・・・むぅ。
「問、マスター何か御不満ですか?」
「デェーオ君が何だか随分と短絡的と言うか、考え無しと言うか、昔居た知り合いに似ているなと思い、チョットイラついただけ」
「解、短略的なのは本人の資質によるものです、元々呪い持ちですのでいずれこう成ります」
「ん? 呪われているのデェーオ君」
「解、呪物を使用した際に自身も呪われています、『人を呪わば穴二つ』です!」
「じゃあ10年近く随分と長い期間呪われていたんだな?」
「否、呪い自体は約10年間中途半端に発動して生かさず殺さずの状態でした、本来ならば対象が破滅すると自身も破滅する呪いです」
「破滅する呪い?、ダンジョンモンスターを活性化させる物じゃなくて?」
「解、破滅の呪物です、使用者が望む破滅を相手に与え、代償に自身も破滅する物です」
「うわ怖いな、でも何故ずっと中途半端な状態だったんだ?」
「解、呪う対象が特殊な方法で生きていて破滅の呪物程度では大した力の届かない領域に居ました、更に対象が高いステータスに成っていたので呪いの効果も力で押さえられ呪いが成就したとは言えない状態でしたので、ですので本来一緒に破滅するはずの使用者にも物事が上手く行かないけれども一応何とかやって行けている程度の中途半端な状態の呪いが続く結果と成りました」
「良くあの性格のデェーオ君がその状態に甘んじて居たな」
「解、呪いが思考誘導していましたので疑問には思っていないでしょう、考えても精々自分が上手く行かないのは世間が悪い程度にしか思っていなかったでしょう。
ですが、先日対象が呪いによるものでは在りませんが死亡しましたので、呪いがここぞとばかり破滅思考に成る様に誘導しています」
「それであんな支離滅裂な事をしていると、でもどう見ても3対1じゃ勝ち目無いだろう」
「解、現在彼の思考は現実味の無い万能感に満たされていますので3人相手でも無双出来ると思っています。
実際は勝ち目はほぼ在りませんがナチュラルハイ状態なので3人側も無傷では済まないでしょう」
だろうね、今現在奇声を上げながら槍を振り回して暴れているデェーオ君が居るしね、・・・ああ、やっぱり駄目だおじさん。
デェーオ君を見ているとアイツ等を思い出す・・・少し手助けしよう、ちょうど良い物も手に入ったし。
こちらの黄金蜂針剣の指輪、MP1を消費して毒針を生成し射出する事が出来るマジックアイテムで所謂暗器です。
ただし毒は致死性の物ではなく、激痛毒という痛覚を倍増する魔法毒らしい・・・痛覚か感度が倍増する魔法毒も有るのかな?
「解、存在します、主に淫魔や魔法触手生物が使用します、ダンジョンで発見しましたら率先して討伐してソレ系のマジックアイテムをドロップさせましょう」
まぁ、そんな機会が在ったらね。
さて、早速準備をしますか、大丈夫おじさんも経験者だ! 効果の程は保証しよう、ラヴィ演出は頼むよ。
「了、何時でもどうぞ」
彼らは突然の仲間からの暴露に戸惑った、そして同時に怒りを覚えた。
あまりにも身勝手な考え、オルディンがどれだけデェーオの面倒を見て来たか。
どれだけ仲間に迷惑を掛けて来たのか、全く理解していないデェーオに呆れと苛立ちが沸き上がる。
さらに、エーコに対して確実に致命傷になる攻撃をした事で怒りが殺意へと変わった。
そんな3人を相手取りながらも負ける気が一切しないデェーオは槍を振り回して暴れ回る、通常であれば激しく動き回れば体力が尽きて動きが鈍るがナチュラルハイ状態の彼は限界を超えても暴れ続けておる。
デェーオの猛攻に流石に無傷ではいられないとビーグは覚悟を決めた時それは起きた。
デェーオが勢い良く槍で薙ぎ払った瞬間、槍が手からすっぽ抜けたと同時にデェーオが崩れ落ちた!
ビクンビクンと苦悶の表情を浮かべながら言葉に為らない声を発して
突然のデェーオの変調に戸惑いながらも様子を見るが、その状態には覚えが在る村のおじさん達がたまになる突発性の腰痛に似ている。
そんな事を思い出しているとデェーオが微かな声でつぶやいた。
「うし ろ から 汚 ねぇ ぞ 誰 だ !」
その言葉に咄嗟にデェーオの後ろを見るダンジョンの暗がりでは在るが人影が見える、不意にエーコ呟く。
「うそ オル ディン ?」
その一言に全員が人影に注目した。
「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
だが突然のデェーオの悲鳴で視線がそれるどうやら急に後ろを向き、腰の激痛に襲われたらしく悶絶している。
だがそんな事よりもオルディンだ! 急いで視線を戻すとそこには誰も居なかった。
ダンジョンの行き止まり石壁が在るだけだ、エーコがふらふらと人影の居た辺りに向いしゃがみ来む、そして何かを拾い上げると両手で握りしめ嗚咽を漏らし泣きだした。
兎に角、エーコが落ち着くまで待つ事にした、ただここはダンジョンだ油断は出来ないオレとシーケルで警戒しながらデェーオを拘束して時間を潰した。
やっと落ち着いたエーコにどうしたのか事情を聴いた、するとエーコが握り締めていた物を見せて来た。
そこには エーコの髪の色と同じ大粒のルビーが2個あった。
俺達はその後、デェーオを引きずりダンジョンを出た。
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