第38話 元おじさん・・・空を飛ぶ。



 マヨヒガに移動してまずおじさんはラヴィに質問した。


「ラヴィ、リルルカさんは自分に鑑定を掛けて来たのか?」


「回答します、鑑定と看破を使用して来ました。

 丁度良かったので〈深淵のモノクル〉の実用テストを行い良好なテスト結果と成りました。

 その結果、通常時はストレージに収納する事をお勧めします」


「鑑定食らうたびにカウンターを使用したら騒動になるからな」


「回答します、それも在りますが、その状況を起こすのがマジックアイテムで在ると知られるとマスターの世界で云う『殺してでも奪い取る』状態に為ります」


「やっぱり、それ程のマジックアイテムなんだ」


「回答します、最低でも国宝級です」


「冒険者ギルドで使用したのは不味かったかな、リルルカさんにも悪い事をしたな」


「回答します、問題ありません、精々憶測を立てて居るぐらいです。

 今後目立つ場所で使用しなければ真実には辿り着けませんし、此方に全てを開示する義務は無いですし、ギルドにも強制する権限は在りません。

 いざとなれば、お金は掛かりますが神殿裁判をするぞと脅せば因縁を付けた方が間違いなく負けるので、捨て台詞吐いて逃げますよ。

 ただ、ギルド経由で情報の通達が行われている筈ですので〈深淵のモノクル〉は普段使用しない方が安全です。

 彼女に関しても、13日間、鑑定系スキルが使用出来ないだけで何も失っていませんので問題ありません」


「はあ~、良いマジックアイテムを所有しても使えないんじゃどうしようもないよな」


「回答します、見られない場所で使用すれば良いのです、見られても始末すれば問題ありません」


「怖い、怖いからラヴィ始末とか怖いから・・・そう言えばあの4人組どうなったかな?」


「回答します、エターナル様が八つ当たり気味に魔法を掛けていましたので自力での解除は97%無理です。

 指定した条件をクリアしない限り解放されることは在りません。

 何せ、対象の犯して来た罪の数だけ強制力は増大します」


「・・・何でエタローは八つ当たりしたんだ?」


「チョットしたお茶目です、〈深淵のモノクル〉のスキル封じ固定のセリフを私が言いました。

 その為、エターナル様が拗ねてしまいましたので、4人組を利用して彼らに罪を数えて貰いました」


 ・・・ああ、うん、あれね、エタロー好きそうだよねそう言うの。

 さて、移動用㋮法の設定を考えるかな。


「サポートします、内容設定を伝えて下さい」




 ・・・・Side


「て、てめえら、 何の真似だ! ザコニーリ様にしれたがっ・・・・」

 ドサッ


「・・・うるせぇよ、どうしようもねぇんだよ! お前らの所為でもあるんだ!

 こんな依頼しやがって! おい! そっちはどうだ!」


「片付いたよ、全員始末した 死体はどうする」


「身包み剥いで個人を特定できる物は燃やせ、死体は切り刻んで森に捨てて置け魔物が始末してくれる、その他の使える物資は荷馬車に積み込め、他は捨てて行く」


「・・・分かった、くそ! 忌々しい頭痛だぜ!」


「急ぐぞ、次の獲物に逃げられたら 悪く為る一方だ!」




 クロウSide


 朝です。

 いつも通りの朝の風景です。


 朝食は、以前仕留めたスカルボアのお肉で、豚丼ならぬボア丼です。

 みそ汁とポテトサラダ付き、朝から肉と思いましたが体が若返った分、全然平気でした、寧ろウエルカムです。

 相変わらず、琥鈴の御飯は美味しいです、ボア肉とお米に絡む甘辛のタレが何とも絶品です。

 ポテトサラダとみそ汁で口の中を一度リセットすると再度味を楽しめます。


 食事も済ませ、少し休憩したのち、マヨヒガから外に出る前にゲート手前で、完成させた移動㋮法を使用する。


「移動㋮法(馬)発動」


 発動点を中心に魔法陣が広がり幾層もの魔法陣に分離する、分離した魔法陣は円形に折り重なり、球状の魔法陣へと変わりその状態で発動。

 魔法陣は一定の光を放つと光の粒子となって霧散する。

 そして、その場に現れたのは、一台の4輪バギー?モドキ。


「うん、馬じゃないよねやっぱり!」


「回答します、馬を(馬力)にこじつけて4輪バギーにして、さらに天馬をこじつけて飛行可能に改編しましたから、4輪とは言いますがタイヤの形をした重力変換推進ユニットです」


「やっぱり、チートだよこの㋮法は、制限があるって言っても上手くこじつければMP消費が許す限りやりたい放題だ!」


「回答します、上手く形にはなりましたが走行試験がまだですのでマスター、テスト飛行をお願いします」


「え!いきなり飛ぶの危なくない」


「・・・大丈夫です、走行試験も飛行試験も地面が在るか無いかの違いです。

 落下防止の術式は組み込んでいますので大丈夫です! (ぼそっ)たぶん。」

 ・・・今たぶんって言ったよね。


「提案します、マスターバギー騎乗の際は、此方のフルフェイスマスクを装備して下さい」

 ラヴィがストレージから渡して来た球体を見て。


「この凹凸の無い丸い物体は何?」


「回答します、以前ドゥジィン様より頂いた贈り物の一つです。

 正体を隠す時に使用出来ますし、便利な機能が満載の神器です」


 おい今、神器って言ったか? またか、また扱いに困る物か?

 ・・・・・・よし! 鑑定は後回しだ、サッサと被ってしまって話題を替えよう。

 『おじさんは人間をやめるぞ~!』 お決まりのセリフを心で叫び、スポッと被った。

 そして、何と無く恥ずかしくなり話題を替えた。


「ラヴィ、このバギーって㋮法で創ったが機械なのか?」


「回答します、㋮法製物です」


「・・・分かった、深く考えたら駄目なんだな」


 そんな遣り取りをしている間に、チャチャとノワがバギー後部に設置した専用収納ボックスに入って内側から丸窓を肉球でポンポン叩き、早く出発しろと催促して来た。


「・・・仕方ない出発するから、内側の安全ロックを掛けるんだぞ」


「ニャ!」「ミャ!」返事をしてロックを掛けた、ロック表示を確認しバギーを起動する。


「チェック完了、偽装隠蔽術式起動、安全術式起動、重力変換推進術式起動、マスター何時でもOKです」


「クロウ・クローバー ㋮法式4輪バギー 行きまーす!」


 キュイイィィン  シュドォォン・・・


 おじさんは今、大空を飛んだ! 

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