第36話 元おじさん・・・自分自身に悩む。



 オルーマンを出て4時間後・・・困った、こいつ等如何どうしよう。

 おじさんの足元には4人の不審者が転がっています。


 時をさかのぼる事4時間前、不審者達はおじさんが門を出るとすぐさま1人を残し引き返した、1人は何処どこへ行ったのかの見張り、残りは襲撃する為の準備、まずは2人が馬で先行して人通りの無い場所で待ち伏せる(その際相手を追い抜くので態度に出したらバレるだろうに此方を見てニヤ付いていた。)

 そして残りの2人が後方から馬車でバレない様にゆっくり進み襲撃後のおじさんの回収と万が一逆方向に逃げられた時の後詰の役割をしていた。


 まあ、全てバレているので、待ち伏せていた2人を隙を見せて誘い出し、木の棒で滅多打ちにした、付与されていた痺れ攻撃で全身痺れ状態にしたのち、バインド魔法で拘束し、猿ぐつわを嚙ませ、偽装を掛けて道端に転がしておいた。

 馬は見えない位置に繋いで有るみたいなので放置した。

 後方の2人も先行した2人がやられているのを確認して急いで此方に向かって来たが、同じ結果で地面に転がっている。


 しかしこの木の棒の痺れ攻撃、非殺傷の武器として使うには中々に優秀だ。

 状態は痺れ状態で所謂いわゆる正座した時の痺れが全身に長時間続く感じだそうだ。


 さて、こいつ等如何しよう・・・。


「提案します、マスターここでは他者に見られる可能性が在ります。

 ですので、森林の少し奥に開けた所が在りますので其方で処置しましょう」


 あれラヴィ、ヤル気ですか?


 取り敢えず、馬は荷馬車から外しておき、荷馬車はストレージへ収納、4人には目隠しをしているので見られる事は無い。

 残りの馬2頭も連れて森林の奥へその際4人は馬に括り付けた、馬さんごめんな変な者括り付けて、でもおじさんもあんなの引きずって行きたくないんだ。

 後で果物あげるから勘弁してね。

 

 ひらけた場所へたどり着くと、4人組を下ろし馬3頭を近くに繋ぎ周囲に結界を張り、他の侵入を防ぐ様にした。


 馬達には約束通りニンジンやリンゴやキャベツを食べ易いサイズに切り分けた物を与えた、喜んで食べている様だ。


 さてこいつ等の目的だが、真面目に聞いても答えないだろうな、本当の事を言うかも怪しいし、噓の見極めなんておじさん出来ないぞ。


「回答します、マスターの〈神羅眼〉でしたら可能ですよ」


 可能なのかい! 便利過ぎるな本当にこのスキル。


「提案します、許可頂ければ、私が直接頭の中から情報を調べて来ますが如何為さいますか」


 え、それって大丈夫なのか。


「回答します、私は大丈夫です」


 ・・・じゃ、程々に頼むわ。


「了解しました」


 ラヴィの返事を聞き、4人組の目隠しを外してみると、おおっ睨んでる睨んでる、何か言いたそうだが痺れと猿ぐつわでまともに喋れないだろう。

 うーうーと唸っていると、全員がビクッ!と反応すると次第に白目を向き痙攣しだした。

「「「「アガガゲガグゲガガガガゲグゴゴゴゴガゲゲゲゲゲゲ」」」」


 そのまま泡を吹いて気絶した、あまりに汚かったので洗浄の魔法を使用してきれいにした。

「情報の収集完了しました、下らない内容でしたが、まとめますとマスターと従魔を金欲しさに襲い、隷属の首輪で自由を封じ、取引相手から借りた馬車に乗せて合流場所で落合い、そのまま別の町に逃げる算段だった様です」


「うわぁ、碌でも無い・・・ん!従魔契約ってこの場合どうなるんだ?」


「回答します、契約を仲介した神にも依りますが、ドゥジィン様でしたら関係者全員に神罰を与えていたでしょう」


「連中は理解していなかったのか冒険者だろ?」


「回答します、冒険者もピンキリです、彼らは〈テイム〉と変わらないものだと思っていたようです」


「違いは何?」


「回答します、従魔契約とテイムの違いは主と従魔を繋ぐ契約の強度が違います。

 テイムの場合は契約者の力(総合力)のみで契約を結びますので強度が低いです。

 ですので、神が仲介する従魔契約よりも契約解除が簡単なのです。

 そして、従魔のほとんどがテイムによる従魔なので良く取引などにも使われます。

 ただ、そういった従魔は弱い魔獣がほとんどで、強い魔獣に成るとよっぽどの特殊な事が無い限りテイムでの契約出来ません。

 厄介なのはこの事を一般の人々はほとんど理解していません。

 理解しているのは、危険がともなう冒険者、情報通の商人、高い地位や立場がともなう様な人々位です」


「連中は理解していなかったと、取引相手もそうなのか?」


「回答します、まともな商人なら知っていますが、余程の馬鹿か知っていても自分には影響が無いと思っているか。

 流石に直接見ていないので判断しかねます」


「隷属の首輪って違法なのか」


「回答します、国によって様々ですが無許可の場合は違法です。

 今回は偽造許可書が用意されていたようです」


「随分用意が良いな、そんなにチャチャやノワは珍しいのか」


「回答します、偽造許可書は以前から用意していたと思われます。

 猫獣族は非常に珍しいです」


「隷属の首輪は没収として、こいつらの始末だよな問題は・・・」

 

「提案します、森にこのままで放置する、魔物の餌、殺す、埋める、等どれにしましょう」


 全部死亡確定じゃん、・・・殺さないと駄目なのか・・・。

 

 衛兵に突き出すとか・・・ああ、やっぱりおじさんは覚悟の無いヘタレだ。


          『主人公なんかに成れやしない』


          『どんなに力が在っても躊躇ちゅうちょする』


          『何処どこまでも小心者だな、自分は』


「みゃん、うみゃん、みゃぐろ、うみゃい、うみゃい」


  何時の間にか肩に乗って居たノワにポンポン頭を叩かれながら慰められた。


 今は・・・独りじゃ無いんだな・・・ありがとうみんな。


「元気が出ましたかマスター、ノワは御礼は、テューるで良いそうです」


「分かった、売店に注文を入れて置くよ!」


「ミャン!」


 心が持ち直したので、再びこいつ等如何しよう。

「回答します、このまま野に放つのはお勧めしません、犯罪称号だけでも〈強盗・強請・快楽殺人・強姦・人身売買・NTR〉等を複数確認しました。

 開放すれば同じ事をより学習して繰り返します」


「逃がすつもりも無いがこいつ等だけじゃ無いだろう関わっているのは、依頼者や取引相手、あるいは黒幕的な人物、所詮末端だろこいつ等は幾らでも居る」


「提案します、でしたらエタロー様と開発した呪術呪文をもちいてこの様な方法は如何でしょう、・・・・・・・」


「うん! 良いね、根本的な解決では無いが少なくとも馬鹿が減る、それで行こう。」


 こうしてラヴィの提案通りにして、4人を開放した、馬と荷馬車は無いと怪しまれるのでそのまま返した。


 寄り道せずに言われた様にする様言い聞かせて送り出した。


 言われるがままに、街へと引き返す彼らを見送り此方もオルーマンから西の方角迷宮都市アベルナを目指す。


「報告します、アベルナまでは徒歩で寄り道せずに進めば30日前後掛かります、如何為さいますか」


「う~ん、乗合馬車は人目があり過ぎるから論外だし、走って行くのも大変だし、シルバーBoxから軍用車を出すのは更に目立つし開放に必要なMP消費が馬鹿に成らないし、・・・あっ! アレが使えるかな」


「回答します、問題無いと思われます」


 ラヴィのお墨付きもあり、おじさんは準備の為マヨヒガに戻った。


 

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