第31話 元おじさん・・・金策と〇〇病



 パッド情報で思わず御胸を見そうになるのを、

「おほんっ、ごほん、げほっ、げほっ」

 咳払いからむせて誤魔化した。


「ク、クロウ様大丈夫ですか!」


 ルミエラさんが心配そうに聞いて来たが、御免なさい、本当に御免なさい。


「大丈夫です、済みません少しむせてしまいました」

 とにかく話題を本来の方向に戻そう。

「失礼しました、もう大丈夫ですのでご心配なく」

 

「分かりました、ですが何か在りましたら直ぐおっしゃって下さい。

 ではまず、残りの工程を終わらせましてギルドカードをお渡しします。

 此方のプレートに手を乗せて下さい。

 手を乗せて3秒後にMPを1消費しますのでご了承ください」

 テーブルにカードの差し込まれた黒光りするプレートを出したので、手を乗せた3秒待つ。

「3秒経ちましたので宜しいですよ。

 では此方が、クロウ様のギルドカードに成ります。

 説明にもありましたが、商業ギルド内で在ればカードを用いて貨幣の出し入れが可能ですので是非ご利用ください。

 後、再度申し上げますが、紛失等されません様にお気を付け下さい」


 ギルドカードを受け取り眺めていると、ターチアさんが話しかけて来た。


「ではクロウ様、次は此方の商談を致しましょう」


「はいそうですね、では自分が考案しました品をお出しします」

 そう言って、リュックサックから幾つかの種類の品を出してテーブルの上に置いたが、二人の視線はおじさんのリュックサックに向けられていた。

 

「クロウ様、失礼かと思いますがその背負い袋はマジックバックですか?」

 ターチアさんに尋ねられたので、事前に決めた設定で話した。


「はいマジックバックですよ、とは言え容量は袋の2倍程度の低ランクの物ですが、祖母が自分に作ってくれた形見なので今も愛用しています」

 そう告げると、ターチアさんは少し興奮気味に迫ってきて。


「クロウ様の御婆様はマジックバックの製造が出来たのですか!

 い、今もその製法、技術は残っていますか!」

 ターチアさん、顔が近いです。


「ターチアさん!仕事中です、落ち着いて下さい」

 咄嗟に、ルミエラさんがいさめながら止めてくれた。


「も、申し訳ございません、つい興奮してしまい」

 顔を赤くして謝罪するターチアさん、女性の恥じらいの表情っていいよネ。

「同意します、マスターの性癖の一つとして記録します」

 まって、ラヴィ間違ってないけど、やっぱり待って下さい。


「あ、あのクロウ様?」

 あ、まずい!

「いえ、お気になさらずにマジックバック関しましては祖母も色々なしがらみが嫌に成り周囲に、田舎でのんびり孫の面倒を看ながら余生を過ごすと姿を消して隠れていた様で去年80歳で亡くなりました」

 スキルを発動し、実に自然な少し悲しむ演技をした。


「も、申し訳ございません、知らぬ事とは言え御辛い事をお聞きしまして」

 御二人とも困った表情をしている・・・全部演技なんです、御免なさい。


「い、いえお気になさらずにもう済んだ事ですので・・・マジックバックに関する製造技術ですが、祖母にこの品を貰って直ぐにボケてしまいすっかり忘れてしまいまして、何処まで本当なのか判らないまま去年に・・・。

 ですので、自分ではほとんど分かりません」


「・・・そうでしたか、済みません未だに製造出来る方が限られたマジックアイテムですので、少しでも情報が欲しくて失礼しました」

 ターチアさんに謝罪されたがおじさん段々胃が・・・


「マスター耐性スキルを発動しました、もう大丈夫です」

 ・・・ありがとう、ラヴィ。

「御礼には及びません、当然の事です」


「ただいま、テーブルに出しました試供品は商業ギルドに提供しますので参考にして下さい。

 此方に詳しい仕様書と制作時に使う型紙、バンドに金具等を用意して在ります。

 基本的な型は、肩・胸・腰の部分を簡単に固定出来て非常時にはすぐ外せる作りに成っていて、種類もそこに並べた3種、容量の多い背負い袋型、袋内が区切られている背嚢はいのう型、丈夫な枠組みの背負子しょいこ型、それぞれに同じ固定処置がされています。

 長期の行動の負担を少しでも軽減出来る様に設計して在ります(ラヴィが)。

 確認なのですが現在同じ様な品が在りますか」


 ・・・・・・仕様書をじっくり見ている。


「クロウ様、背負い袋や背負子は御座いますが、この固定器具の発想は御座いません。

 ですので、この発想を組み込んだ背負い袋や背負子は、冒険者や行商人に売れると思われます。

 クロウ様はどの様な販売方法をお考えですか」


「全て商業ギルドに委託する場合はどうなりますか?」


「その場合は、神々の契約のもと商業ギルドで全ての準備と販売を行い、それ以外では同じ物は販売出来ません、発案者のクロウ様には、売上の1割が5年間振り込まれます。

 5年経ちますと何処ででも同じ物を販売出来ます。

 これ等の措置は、発明者や職人を守る為に神々が考えられた事です」


「じゃあ、それでお願いします」

 おじさんあっさり同意します。


「・・・承知いたしました、ではその様に契約致します」

 何か思う所も在りそうだが、おじさんは次の品を出す。


「では次の商談に行きましょう」

 そう告げてテーブルに品物を並べて行く、彼女達は興味深そうにそれらを見ていた。

「これらの品は現在販売されていますか」

 ターチアさんに尋ねた。


「・・・いいえ、これ等の品は商業ギルドでは取り扱っておりません。

 これ等は一体どの様な、品物なのでしょうか?」


 よし!まだ転移者は動いていない、おじさんが取り出したのは遊具、異世界物定番のリバーシ、将棋、チェス、トランプ、サイコロの5つで在る。


「どれの品も遊具、所謂いわゆる頭を使う遊ぶ道具です。

 此方がそれぞれの遊び方の説明書とこちらで思い付いた売り込み方です」


 受け取った書類を食い入る様に読み込んでいる彼女達を後目しりめに暇なのでそれぞれの遊具を弄っていた。

 リバーシ、トランプ、サイコロについてはそのままの名称で記載したが、チェスは駒の一部の名称を此方に存在する似た様な役職の名称に変えた。

 将棋については、チェスと被るのと駒の名称の置き換えが面倒なのでルールはそのままでゲーム名を変えた。

 その名も〈サモナー戦戯せんぎ〉略して〈サモせん〉、王将を召喚士に置き換え、駒を全て召喚獣に置き換えた。

 ネーミングセンスはおじさんなのでご了承願いたい。

 暇つぶしに、ラヴィを相手にオセロ、チェス、サモせんで遊んだが・・・全敗でした・・・予想はしたよ、でも完膚なきまでに叩かなくても良いと思うんだ、おじさんは・・・真っ白なリバーシを見て泣きそうになったヨ!


「回答します、愛情表現の一環です、それよりも彼女達がみていますよ」


 顔を上げると彼女達が食い入る様に見つめていた。

 そして、ターチアさんと目が合うと勢いよく語り始めた。


「クロウ様!素晴らしいです!今までこのような品は在りませんでした。

 仕様書の内容も分かり易いですし、付加価値を付けるやり方も実に良いです。

 売れます、いえ売ります!

 これらも、商業ギルドで取り扱って宜しいのですか!」


「はい、宜しくお願いします」


「・・・いや、しかし・・・これ程の物を今の規定で・・・」

 すごく悩んでいる?いや葛藤している。


「ターチアさん、自分は今の商業ギルドの規定での取り扱いで結構ですよ」

 余計な、波風は立てたくないのでね。


「・・・クロウ様、この様な事を御聞きするのは大変失礼なのは分かっておりますが、敢えて御聞きしても宜しいでしょうか」

 ターチアさんが真剣な面持ちで訪ねて来た。

 ルミエラさんは、どうしようかおろおろしていた。

 まあ、予想は付くので話を聞こう。


「どうぞ、遠慮無く聞いて下さい、御答え出来る事でしたら御答えします」


「有難う御座います、では早速クロウ様はこれだけの大きな利益を出せる発案を御自分では為さらず、我々商業ギルドに全てを任せるとおっしゃっています。

 この考え方は特におかしいとは思いません、ですが私にはクロウ様は利益を二の次にして、これ等の商品を商業ギルドを利用して拡げ様としているように思えます。

 ・・・これはクロウ様の考えですか?・・・それともいずれかの神々の御意思でしょうか使徒様・・・」



 あっれ?話が飛躍していません、おじさん利益は大事だけど全部任せるから1割でも十分過ぎると思って了承したのだけど、なんて言い訳しよう。


 !!『交代だ!』


 え!ここは、エタローが居た部屋?

 現在おじさんは、こたつの中に居ます。

 近くには、今だに目覚めない3人目と大型ディスプレイそこには先程まで自分が見ていた光景が映し出されていた。


 

「ふふっ、使徒様と間違えられるとは光栄ですが、残念ながら自分は使徒様では在りません。

 今回の件は、恩人への約束を果たす為に行った事です」


「恩人ですか?」


「はい、とても大切な命の恩人です」

 要所要所でスキルを混ぜながら細かい身振り手振りで物語を語る様に語るエタロー中二病、彼女達も話に引き込まれたのち最後には涙していた。


 おじさんは恥かしさのあまり、部屋でゴロゴロしていた。


「その様な訳で、自分は新たな発想が芽生えるのを信じて此方に訪れました」


「ぐす、・・・クロウ様申し訳ございません、その様な寛大な御考えの元、私達商業ギルドを頼りにして頂きまして、この事は決してには漏らしませんので御安心下さい!」


「では少々お願いが在りまして」


「どの様な事でしょうか、大抵の事でしたら御聞き出来ますが」


「発案者の氏名を仕事用にエターナル・ロードと名乗りたいのですが、宜しいでしょうか」


「仕事名ですね、同じ様にされている方は居りますのでもちろん問題ありません。

 では、契約の際に全て済ませましょう、クロウ…いえ、エターナル様!ギルドカードを此方に・・・手続きを始めます」


 ぴくぴく・・・お、おじさんのライフはゼロです。

 おい!エタローなにしてくれてるんだ!もうぅ、商業ギルドいけない!


「この度は、貴重な体験と御話が出来、良い御商談でした」

 それぞれと握手を交わし終始御満悦なエタロー。


「いえ、此方こそ御理解頂けて感謝の極です。

 また、良い御話が在りましたら尋ねさせて頂きます」


「「是非、いらしゃって下さい」」


「では失礼します」

 軽く手を振り、商業ギルドを後にした。


 『満足した!』そう告げて交代して行きやがった。


 エタロー後で、取り敢えず用事は済んだし宿に行こう。

 ラヴィ、案内よろしく。


「了解しました、安全な宿に御案内致します」


 ラヴィの案内のもと、宿に向かうおじさんだった。



 

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