4-2
やたらと古い町なみ。
俺の記憶にあるエロゲーから推測すると一番近いのは明治ロマン紀行なのだが……
どう見ても、あの世界観を再現しているようには見えない。
瓦やトタンの屋根の家が目立ち、平屋もそれなりに見られる。
体感時間で10分くらい歩いたが、今のところ信号機も見なけりゃ自動販売機も見ない。
道幅があまり広くないからだろう。車も、ほとんど見かけない。
夏だからだろうか?
ランニングシャツに短パン姿の子供達が元気よく飛び交っているのが気になった。
連れてこられた場所は市川屋と看板を、かかげた商店。
木造の二階建てで、ホロを使って影を作り。店先まで商品を並べていた。
ぱっと見たところ、雑貨屋さんなのか青果店なのかよく分からない感じで、とにかくごちゃごちゃしていた。
電球も店の中央部分に一つあるだけ。しかも点灯していないから薄暗い。
正直なところ、よくこんなので商売がなり立ってるなぁって感じだった。
店に店員も居なければ客も居ない。
本来の大国寺なら確実に商品を盗っていた事だろう。
最低な思考回路である。
藤山さんは、なんの断りもなく店の奥の方へ入っていき。
居住スペースと思われる所まで顔を突っ込んで声を張り上げていた。
「市川さんや! おるかえ!?」
「はいよー! いまでていくけー、まっときー」
呼ばれなきゃ出てもこねぇとか、どんな感覚してやがんだココの店主は!?
これじゃ大国寺じゃなくたって盗みたい放題じゃねぇか!
そして出て来たのは頭髪のほとんどなくなった爺さんだった。
丸顔の、だんごっぱなで、鼻毛も伸びほうだい。
商人ではなく、芸人として笑いを取ってるって言われたほうが、しっくりくる気がした。
「ほーこりゃまた、めんどうごとさ持ってきたなぁ。ちょっとまっとれ」
幼女を見るなり爺さんは店の奥へ引っ込んで行った。
そして、しばらくすると出てきて、「林さ、よんだで中でまっとれ」と言ってきた。
正直なところ、腕が痛くなってきていたので、つごうがいい。
お茶の間に上がらせてもらうと……
いかにも奥さんですってな感じの婆さんが、ちゃぶ台の前に座ってて。
目に映るすべての物が古臭かった。
テレビもなければ冷蔵庫もない。
エロゲーの知識を総動員しても年代がさっぱりわからん。
まるで何十年も前の家庭環境を再現しましたってな感じである。
相場勇気の頃よりも、さらに古い時代設定なのだけは、心底わかった。
ホント、これってどうしたらいいんだ?
喉が渇いていたので、出されたお茶はありがたく飲んだが。
出来る事なら冷たい飲み物が欲しいところだ。
*
5分ほどで、やって来たのは警察官だった!
よもや、いきなり警察に売り飛ばされるとは思ってもいなかったが……
大国寺の日常を考えれば当然の結果だと諦めもついた。
しかし、なぜかペコペコと頭を下げているのは警察官の方で、よろしくお願いしますってな感じで帰ってしまった。
どうやら、この世界の設定では、警察官よりも町内会長の方がエライみたいだ。
結論からすると――俺は、逮捕されていない。
なんでも戦後。外国人が地元の女性との間に子供を作り。結婚することもなく本国に帰ってしまうことがそれなりにあるらしく。
見た目が外国人でしかない子供が手に余り、捨ててしまうという残念な事があるそうなのだ。
まったくにもってもったいない話である。
これがエロゲーだったら、それなりに需要あるだろうし。むしろ可愛い幼女を自分好みに育ててから楽しむって感じのゲームもあった気がする。
そして、この幼女は俺が面倒を見るってことで話がついていた。
や、俺、無職のニートどころか最低最悪の状況なんですけど?
こんなんで、他人の世話なんてできるわきゃねぇって分かりそうなもんなのに。
「あのぅ。面倒見ろって言われても。俺、金もないですし……」
「やっぱり、
藤山さんは俺を見て意味不明な事を言っている。
実は、さっき警察官が来る前にも似たような事を言っていたのだ。
要約すると、大国寺の中身が社様とかいう神様みたいなものと入れ替わっているのではないか? と言うことらしい。
まぁ、中身が入れ替わってるって事に関しては、その通りだと思うが神様ってのはどうなんだろう。
「まぁまぁ、社様かどうかは、すぐに分かる。しばらくようすみたらえー」
そう言って、市川さんの奥さんが話をまとめはじめ。
俺は最低最悪の不労者から、この市川さんの店を手伝う事になった。
そこでまずは、臭いのをなんとかしようということになり。
着替えといっしょに手渡されたお風呂セットとともに、言われるがまま一人で銭湯に向かったのだった。
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