第10話 証人尋問⑥ その他
「関係ないでしょ!何よ被告人って!無罪よ無罪!決まってる!先生が王犬を死なせるなんてありえない!!」
「退廷を命じます」
「宣誓、私は良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを固く誓い…いや、誓えません」
「それは何故ですか?」
「隠したいことを質問されるかもしれないと思うと、迂闊に誓うことは出来ません」
「では、退廷を命じます」
「承知致しました、失礼致します」
「せんせい、わたしは、りょうしん?にしたがってしんじつをのべ、なにごともかくさず、いつわり?をのべないことを、かたくちかいます……これ、なんですか?」
「ウソはいけないよ、ってことだよ。いくつか質問するけど、正直に答えてね。約束できる?」
「約束します!」
検察が質問を始める。
「お嬢ちゃんは、この先生を知ってるかな?」
「はい!ちょっと前までわんにゃんパークにいました!」
「よく覚えてるね?」
「えっと、えっと、『どうぶつのふしぎ』っていうの、いろいろ教えてもらいました。とても面白かったので、覚えてます」
「先生は、動物が死んじゃうことについて何か言ってたかな?」
「悲しいことだけど、ぜったいそういう日が来るって」
「どんなふうに死んじゃうんだろう?」
「おじいちゃん犬とかおばあちゃん犬になって、静かに死んじゃうんだって」
「先生がどうしてわんにゃんパークからいなくなっちゃったか、聞いたことある?」
「えらい先生だから、王様のためにお仕事するんだって聞きました」
「お嬢ちゃんは、先生のこと好き?」
「異議あり!これは子供に対する質問では─」
「異議を棄却します。むしろ、今の異議が証人を萎縮させてしまう恐れがあります。もう少し考えていただきたい」
「ごめんね、こわがらせちゃったね。先生のこと好き?」
「大好き!」
「どうして好きなのかな?」
「優しいし、なんでも教えてくれるし、私だけじゃないよ、動物もみんな先生のこと好きだよ」
「ありがとう、おじさんからの質問は終わりだよ」
すぐに弁護人側からの質問が始まる。
「お姉さんさっきはびっくりさせちゃったね、ごめんね」
「んーん、バク転裁判のゲームで知ってた!異議ありって、本当にやるんだね!おば……お姉さんかっこよかった!」
「そ、そうなの、本当にやるの。ありがとう。さっきのおじさんみたいに、『お姉さん』からもいくつか質問させてね」
「う、うん!」
弁護人のこめかみに血管が浮かび、表情が凍りついているような気もする。
「この先生、他の先生と比べてどう思った?」
「あんまり人と人を比べるのは良くないって学校の先生が言ってた」
「お嬢ちゃん、今はいいんだよ。おば……お姉さんの質問に答えてあげてくれるかな?」
「『お姉さん』もう一回聞くね。他の先生と比べてどう思ったかな?」
「忙しそうにしてる時でも優しかった!あといつも動物と一緒にいたし、あとあと、でも時々怖かった」
「怖かったってどういうこと?」
「ものすごく怖い目をするときがあるの。聴診器?当ててる時だったかな、いつもの優しい顔じゃなくて、ギロッとした感じ」
「そのこと先生に言った?」
「言った!」
「先生、何て言ってた?」
「病気かもしれないから一生懸命音を聞いてたんだって。こういうときは、他の先生より怖かった」
「音を聞く時だけ?他のことしてる時も、そういうことあった?」
「あったよ、犬の脚を触ってた時とか、犬の目をじーっと見たり、あと犬のお口開けたり」
「ありがとう。きっと真剣だったんだね。そういう時にお邪魔しちゃったことはある?」
「邪魔だったのかなぁ?話しかけたりしてもお返事くれないから、どうしたんだろうと思って見たら、そういうお顔で犬を見てたの」
「うんうん、なるほどね、ありがとう。『お姉さん』からの質問は、これで終わりよ」
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