【三】人気の小説わからない


 わからないと言っておりますが、これに関して私は比較的肯定の立場です。

 まず肯定の理由から。近年のなろう系(って言えばいいんでしょうかね)には非常に画一化した「型」が存在します。ただそれは今に始まったことではなく、昔話や神話を見ても異類婚姻譚や貴種流離譚りゅうゆうたんなど型はこれまでも存在しました。これのいいところは組み立てや構築の労力が省けることです。その分をストーリー作成に回せるんですよね。

 それに加えて、今では様々な要素まで確立してきました。無双、TUEEE、ゲーム要素、転生転移、VRMMO。言ってみれば、私たちがライトノベルの対局と考える文芸文学は精密な粘土細工で、人気のなろう系はプラモデルです。粘土細工であれば型から要素までを事細かに決められますが、時間と労力、膨大な知識が必要です。対してプラモデルなら、最低でも組み立てるだけ。それが飽きたらほかのパーツ(要素)を買って、カスタムすればいいのです。ただ要素と型があまりにも画一化しているため、粘土細工のような精巧さは出しにくくなっています。


 私は読まないにせよ、そうしたなろう系が小説とか創作の輪を広げているのは好ましい現象でしょう。何と言っても内輪でやってくれれば私に迷惑がかかるわけもありませんし、外野がやいやい言うべきものではありません。

 あと、個人的には今後どのような「型」がこうして爆発的に流行していくのか、半ば研究対象としても、とても気になります。SF好きな私としては、売れないSFの人気に火をつけてほしいですね。



 ただ一つだけ、どうしても言いたいことがあります。もしなろう系のみを読んでいて、文豪や古典作品などを読んたことがない方がいたら、ぜひそうした分野にも足を広げてみてください。世界を広げてみてください。

 今でこそ、日本は政府や民衆も一緒になって「理系」をもてはやしますが、人類が生まれてこの方文明と文学を手放したことは一度もありません。それになろう系もその連綿と受け継がれた系譜の、一つの到達点と言えます。それを形作った、あるいはそれに影響を与えた作品に、会いに行きませんか?

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