第12話

あれから先輩とは一度も会っていない。


先輩は気付いたら仕事を辞めていた。


私もしばらくして、先輩がいなくなった会社を辞めた。




時々、似た人を見る。


本人なのか、

他人の空似なのか、

確かめる勇気も術もないけど。


きっとその中のどれかは本人なのだろう。


声をかけて、近寄って、抱きしめたい。


あんな事があったにも関わらず、


憎いのに


悔しいのに


嫌いになれない。




今でも嫌なことがあると


無性に


"消えたい"


と思う。


きっとあの時に完治しなかった傷が


身体に住みついたのだ。




私にこの先、子供ができて

その子どもにも子供ができたら

きっと可愛い孫に先輩の話をするんだ。


おばあちゃんにはね、

すごく好きだった人がいたの。

面白くて、仕事が出来る、とても尊敬できる人なの。

その人とは結ばれなかったんだけど、

こんなに素敵な手紙をくれたのよ。


そう言って子どもにも夫にも秘密の内緒話をするの。




風の噂で、先輩は

結婚して子どももいるらしい。




それでいい。




私も幸せになるから。




それでいい。







------------------


最後までお読み頂きありがとうございます。


先輩視点の「僕と仔猫」も併せてお楽しみください!


評価や応援コメント頂けると励みになります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

先輩へ〜好きな人の忘れ方〜 @chocolateparfait

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ