第6話
それからの先輩は、噂が嘘のように一途だった。
呑み過ぎを心配したら、お酒の量を減らしてくれた。
嫌いなタバコもやめてくれた。
連絡なんかは先輩の方がマメなくらいだ。
気持ちだけでなく、身体でもたくさん愛情を注いでくれた。
次の年、私は異動になった。
少し家から遠くなった私をよく迎えに来てくれた。
連絡があまりないと、子犬みたく拗ねた。
束縛が嫌いな私は少し困ったが、こまめに連絡をするようにした。
ケンカもあって、何度か離れた期間もあった。
それでも、先輩にまた戻った。
イベントごとに
何が欲しい?
と聞いてくれるので、
毎回決まって「手紙が欲しい」と伝えた。
その都度、先輩は手紙を書いてくれた。
体格に似合わず、可愛い字だった。
読んでいると思わず笑ってしまうような、ユーモアと愛に溢れる手紙だった。
私は今でも、その手紙を大事にとってある。
そして、
たまに読み返しては懐かしむ。
今頃、何をしてるのかなぁ
幸せになってるかなぁ
でもムカつくから、小指の角をタンスにぶつけてて欲しいなぁ。
なんて、どんなに仲の良い友人にも誰にも話してないけど
今でも逢いたくなる時がある。
先輩は、手を広げて
「おいで」
と、言うのが口癖だった。
私はよく、照れながらその広い胸元に飛び込んだ。
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