第4話 重盛敦はチートを否定する

「うぅ、、こ、、ここは。今はどこにいるんだ?」


おそるおそる目を開け、視界に入ってきたのは雲だった。そう重盛敦は今、空にいる。


「どぅえ!ええええ、、やべぇ」


頭の処理が追いつかない。だがおかしい。空にいるはずなのになぜか落ちない。なぜだ?


「考え事してるようでごめんだけどさぁ?そろそろ私の存在に気づくとかないわけ?」


重盛敦の服の襟を掴みながら、浮遊しているその女性には翼が生えていた。重盛敦はこの女性を知っている。そう、コンビニのお姉さんだ。


「やっと認知してくれたわね。今は状況が状況だから細かくは話せないけどあなたにも分かるくらいに簡単に説明するわね。」


「(あれ?この店員さんってこんな口調だっけ?)」


重盛敦は、まるで親猫が子猫の首元を噛んで運んでいる時の子猫のような状態にあり、それがなんだか心地よい、、なんでだ?


「つまりはあなたは、無理矢理転移させられようとしてんのよ。しかも、転移後の記憶引き継ぎ無しでね。」


ん?転移?何言ってんだ。いや待てよ。初めて会った時もそうだけど普通に翼生えてる人が言ってるんだから信じるんじゃ無いのか?

いや、、やっぱりねぇわ。無い


「無理」


「聞こえない?今空だからもうちょい大声で言ってくれる?」


「むーーーーりーーーー」


「はあ!?」


「ごめんなさい無理です。だって、ありえないんだもの。空飛ぶとか、転移だとかさあ。漫画やラノベでもあるまいし、、」


重盛敦は、、あまりに否定的だ。

あまりに今の状況が現実離れしすぎて何も考えられない。とにかく今取る行動は目の前の現実を否定することのみである。重盛敦はそのことに一点集中した。


「無理って、、まあいいけど。でももうじき着くわよ。」


「ど、、どこに!」


「転移の祭壇よ」


「また転移かよ。勘弁してくれ」


一回も転移したこともない人間がまたという言葉を口にするあたり、相当焦っているのが見える重盛敦だが、そんな重盛敦をよそに店員は、


「ここは、たぶんまだ誰も使ったことがないはず。だから急ぎましょ。ちなみに言うけど、こうして正式な転移の儀式を行わないと転移後の世界で前の記憶が引き継げないっていうのが転移においてのルールなの分かった?」


「わ、、わかった、、無理だよ!」


「はいはいはい」


完全に流されてる、、

重盛敦の否定がゴミのようだ。店員は、なぜか巫女の姿に着替えて、大きな宝玉がある杖を取り出した。そして唱える。


「我、転移者を導きし者!我に答え、応じよ。転移者名は重盛敦!世界を救う者の名だ」


と唱えたと同時に、蒼い魔法陣が展開され、その一部が重盛敦を包み込み、そして、


「転移展開! 絶対反射、自動回復、神のお告げ、条件破棄、妨害強制阻止、全魔力特適応攻撃力守護、、以上を重盛敦に捧げて私、ドライ=ユイが命ずる。転移させたまえ」


途端に重盛敦に纏っている光が強まり、やがてそれは身体の全てを覆い、重盛敦は消えた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る