第7話
あれから数日が経った。私は自室で、これからのことについて頭を巡らせていた。…一瞬だけ、もうリリを許してもいいのではないかという思いが脳裏に浮かんだ。
「…いや、まだまだこんなものじゃ…」
そもそも、まだ向こうから一度だって謝られてもいない。これについて考え始める最低条件は、まずそれが満たされてからだ。
…少しばかり、部屋の中を見渡す。あの女の部屋と違って、私の部屋に物は少ない。それは別に、私が断捨離をしているわけでもないし、あの女が物をため込む性格であるからというわけでもない。その理由について思考を始めた時、過去の出来事たちが頭の中によみがえる。
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「ごめんね、リリ…あなたを丈夫に生んであげられなくて…」
「ゲホゲホッ…私は大丈夫よお母さん。だってお母さんの娘なんだもん」
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「ミナ!あなたはリリのお姉さんでしょう!しっかりリリを見ていてあげないとだめじゃない!」
「ハァ…ハァ…お母さん、私は大丈夫だから…お姉ちゃんを怒らないで…」
「ああ、リリ、あなたは本当にやさしいいい子ね…立派よ…」
「ありがとう、お母さん…」
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「なんでリリにばかりって…ミナ、君にはその健康な体があるじゃないか。それ以上に大切なものなんてないだろう?わがままもほどほどにしてくれよ…リリに申し訳ないとは思わないのか?」
「お父さん、お姉ちゃんを怒らないで…私は仲の良いみんなが大好きなの…」
「…ごめんな、リリ。君の気持ちをわかってやれなくて。毎日苦しいだろうに、本当によく頑張っているね…何か欲しいものがあったら、遠慮なく言いなさい」
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私は決して、両親が嫌いなわけじゃない。…ただ、私も愛されたかった。私も両親を心から愛したかった。
リリと向き合わなかったんじゃなくて、お母さんと他愛もない話をしたかった。
ほしいものが欲しかったんじゃなくて、お父さんが贈ってくれるものが欲しかった。
…そんな毎日を送っていた時、リリじゃなく、私に声をかけてくれたサルタ。お母さんとできなかったいろいろなお話を、彼はいつまでもしてくれた。お父さんがくれなかった贈り物を、私にくれた。誰にも愛されていなかった私を、愛していると言ってくれた。
…そんな彼までも、あの女は私から奪ったのだ。手に入る力がだんだんと強くなっていく。少しでもあの女を許そうと考えたさっきの私を、ひっ叩いてやりたくなる。
部屋にある、鏡に映る自分の姿が不意に目に入る。私の目は完全に、復讐者のそれであった。
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