第4話

--リリ視点--


 お、おかしい…朝起きてから、足が全く動かない。ベッドから降りることさえまともにできず、転がり落ちるように床に顔をうちつけてしまった。足に痛みなんかは全くないのに、一体どうして…

 その音を聞きつけたのか、使用人の1人が扉をノックし扉を開けて、私の元へ駆け寄る。


「大丈夫ですか!?リリ様!?」


「い、いつものことだし、大丈夫…」


 嘘を、ついた。今回だけじゃない。今まで足が悪いふりをしてきたのだって全て嘘だ。…しかし今日は、なぜだか本当に動かない。

 使用人の手を仮り、なんとか食堂へ移動する。支えられる肩がものすごく痛い。いつもは足が悪いふりをして、足に力を入れていたから、そんなこと知るはずもなかった。…わざとらしいから避けてきたけれど、車椅子を準備することも考えないといけないかもしれない…

 食堂につく頃には、身体中に痛みがあった。そんな私の顔を見てか、先に着いていたサルタが駆け寄ってくる。


「リリ…顔色が良くないね…僕にできる事があったら、なんでも言ってくれ」


「…」


 いつもならサルタに抱き寄って甘い言葉で誘惑する所だけれど、全身が痛くてそっちに神経が回らない。私は簡単な挨拶だけして、サルタの横を通り過ぎた。

 遠目に、ミナの視線を感じた。表情はよく見えないけれど、きっとサルタを横取りされた事を勝手に恨んでいるんだろう。そんな事が容易に想像できた。

 食事中もサルタは定期的に話しかけてくれたが、私はあまり相手にせず、そのまま食事を終えた。普段座っている時も、無意識の間に足で体のバランスをとっているのだろう。今の私にはそれができないからか、少し座っていただけであるのに疲れが蓄積されて、かなり息切れしてしまっている。


「や、やっぱり顔色が悪いよ、リリ…今日は、部屋で横になってた方が…僕が部屋まで送るからね」


 ありがとう!サルタ大好き!…なんて普段なら甘い声をあげてやる所だけれど、今はうるさくてたまらない。どこかに消えてくれないか、本当に。

 そして今まで遠目で見ているだけだったミナが、私の元に寄ってきた。私は邂逅1番に、ミナに詰め寄った。


「…一体何をしたの…」


「…あなた、昔から体が弱かったものねぇ。最近、一段と悪化してしまったんじゃないかしら?素敵な旦那様にずっとそばにいてもらったら、きっと良くなるわ」


「…!?」


 彼女はそう言い、軽く挨拶をして食堂を後にした。…一体、どんな手を使ったと言うのだろうか…

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