【小さな旅人】「大きな旅立ち」

 森にたくさんの人が集結し、その後気配がある程度消えたころ、ボクは一人、あの時の感触を思い出していた。


 ボクの頭に触れたその手。その手にはどこか懐かしさすら感じて————


 あの時、ボクはあの人を追いかけたんだ。

けれどあの人はもうどこにもいなくて、そのまま数日が流れた。たくさんあった人々の気配も薄れ、それでもボクは必死に森中を走り回って探した。けれどやっぱり見つからなかった。


 だからさ、ボク考えたんだ。


 本当ならここから抜け出すなんてことしちゃいけないんだけど、ボクはあの人に会いたかったから。あってもう一度あの感触を体感して、ボクの中に眠るかもしれないもう一つの記憶を取り戻したかったから。


 だから、良いよね。


 他のスライムたちには白い目で見られたけど、それでもボクは外の世界へ出てみたいんだ。もう一度あの人に会うまで、外の世界を旅したいんだ。




 ————こうして、一匹のスライムは、星者の森を抜け出して外の世界へと旅立っていった。

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