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 閉鎖された空間じゃ、そうそうお小遣い稼ぎもできない。

 なにより、仕送りには上限が設けられているしね。

 だから、未来のために闇市とか情報とか売って稼いでいるやつがいるんだ。



「まあ、キャンセルされたらしいけど」

「なんで?」

「さあ? 分からないそうよ」

「金やろ?」

「それで手頃なジャージに落ち着いたってところか?」

「だから、ライダースじゃなくジャージを着ているのね」


 美樹もことごとく口にされる“お金”という言葉に納得したらしい。まあ、それ以外の理由なんて見当たらない。身元バレが気になるなら、そもそも注文するわけもないし、あわれにも後々気づいたんだとしたなら、発注書を処分しないなんてバカな見落としはしないだろう。


「まあ、可能性はあるでしょうね」

「ジャージなら母親にも頼みやすいしな」

「すでに使ってたヤツも多いやろ」

「だとすると~、だいぶ味気ないね~」


 私達の中で確かな形となってきた第三勢力の姿が、脳内でとてもみすぼらしいイメージとして成り立ってしまう。


制服ユニフォームか」

「第3勢力やな」

「ま~【鎮護の集い】なくなったしね~」

「というより、【魔王】が卒業したってことの方が影響は大きいだろ。いろんなヤツが好き勝手してるぞ。そのおかげで風紀はてんやわんやしてんだろ」


 皆がちらりとこちらを伺うように見た。


「理事長の孫は抑止力にはならないんだね~」

「私、誰かに危害を加えた覚えはないわよ」

「今は~、でしょ~?」


 何を言いたいんだか。

 魔王が恐れられていたのは、その力ゆえだ。

 まさか、弱味を探ってることを知られているのか?いいや、それはないだろう。


「第3勢力にしろ、そうじゃないにしろ。ジャマをするようなら、見過ごすわけにはいかないわね」

「随分手厳しいんだね~」


 松ちゃんの言葉に、皆の顔を見渡せば、なぜか【菩薩】もマッキーさえも、なんとも言えない目をしてこちらを見ていた。

 何を危惧しているのか。余計なやっかみか、それともことを成すための尽力にか。


「別に、潰そうなんて思ってないわよ」


 なんにせよ、なぜか非難されている気持ちになって、視線を逸らした。その先で、美樹が悲しそうに苦笑をこぼしていた。


「とにかく、私たちにとってどんな害があるのか。知っておいた方が良いのは確かよ。泉くんの特技も、見つかりそうにないなら、なおさら」


 今後、同じことで悩みたくないのは、私だけじゃないはずだ。

 1つの問題はその時に解決しておくことが、今後の私達のためなのだ。

 少なくともあと2年。私達は泉くんに生徒会長でいてもらわないといけないのだから。

 誰のためでもない。自分のために。


「高木 祥について聞けるだけ聞けば良いんだな」

「本人に直接聞くの~?」

「その前の情報収集だろ。そのあとのことは、俺の専門じゃねぇよ」


 私の仕事だと言いたげに、菩薩に睨まれた。


「そうね。なら、吸血族についても調べてもらえる?」


 目を丸くする菩薩に、眉をひそめた。


「なんだ、そのダサい名前」


 まさか菩薩が初耳とは。

 私はその事実に、目を細めるほかなかった。

 

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