007 二日目 夜 夕食
佐々木さんが家に着きドアを開けると、ドアの横にあるキッチンの、
その光景から立ち尽くすしかなかった。
シャッシャッシャッシャ
(身体が…てかなんか削ってる…)
今朝までは巨大な猫だったはずのものが、首から下だけ人間の姿になっている。
しっかりと服まで身に纏って。
そして何かをひたすらに削っている。
声をかける事もなく暫くその光景を見ていると、猫がこちらに気づいた様で、
口を開いた。
「あ、おかえりなさい。」
さも、この家の住人ですよ、と言わんばかりに当たり前の言葉の様に。
佐々木さんはその光景と状況により、
元より少し鈍い口の使い方が更に鈍くなった。
『ただ、いま…。』
そしてキッチンのすぐ後ろにあるダイニングテーブルに腰掛け、
肩ひじをつき、猫が何か作る様子を見ながらぽつりと話した。
『アンタ今日、ご飯どうしたの?』
猫は茶碗を流しの下の戸棚から取り出し、米をよそい、
その上にハラハラと何かを振りかける。
「食べましたよ?鳥を。」
その返答に対し、佐々木さんは
(一応猫なんだ…)
と思った。
そんなぽつりぽつりとした会話をしているうちに何か料理が出来上がった様だ。
「はい、できましたよ。」
コト、とテーブルの上に置かれたそれは、出来立てで、
上にのっている先ほど削っていたものが米の熱でまだ少し踊っていた。
佐々木さんはそれを見て少し呆れた様に、怪訝そうに言葉を発した。
『ねこまんまじゃない。』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます