006 二日目 昼 学校

「佐々木さん、これ、当番日誌」


クラスメイトの男の子が少女に近付き、

最低限の要件を最低限の言葉で伝えた。


『あ、ありがとう』


少女の姓は佐々木。

佐々木さんも最低限の言葉で返す。


「じゃ。」


そう言うと男の子は軽く手を上げ去って行った。


(池上くん…だっけ…)


佐々木さんはあまりクラスメイトを把握していない。

把握する気もない。

特に興味がない。

つまりどうでもいいのだ、全てが。


幸い佐々木さんは窓際の席なのでぼーっとするには一番いい場所である。

特に何を考えるでもなく、宙をまんべんなく見る。

教室は二階なので眺めもいい。

ふと窓の外に目をやると、校内に猫が侵入していた。

花壇の当たりで鳴いている。


今朝の布団を購入してきた大きい猫を思い出した。


(ご飯…作ってきてやればよかったな…)


そんな事を考えたのは初めてだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る