003 一日目 深夜 就寝

今夜はすっかり遅くなってしまった。

いつもなら独りで、やる事が決まっている分早く布団に就けるのだが、

今日は来客がある分、夜もとっぷりと過ぎている。


やっと家事やらなんやらが終わり、布団を敷く。

少女が季節違いの自分の分の掛布団を押し入れから引っ張り出そうとすると、

猫が口を開いた。


「ところで」


少女は自分の布団を猫に譲った。

そこに猫は遠慮もなく、さも当たり前の様に、

自分の布団であるかのように、肩ひじをついて横たわっている。


「なぜ私を拾ってくださったんです?」


少女はまた固まる。

なぜ?なんでだろう。

多分何も考えていなかった。

しいて言うなら懐かしい何かを思い出そうとしたが、

それはきっとこの猫に失礼だ、と思い考えるのをやめた。


少女が固まっていると、猫が声をかける。


「どうしたんです?」


少女は少し掛布団を抱きしめると、呟いた。


『なんでもないわ。』


そのまま季節違いの掛布団を自分にかけ、壁にもたれて包まる。


『それより、アンタ…自分の布団くらい自分で敷きなさいよ…。』


部屋の明かりを消し、少女の方が先に寝に入った。

猫はしばらくの間、その少女の事を肩ひじをつきながら見ていた。


静寂の中、カーテンのない、むき出しの窓から少し肌寒い風が入ってきた。

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