西のほうから -9
『赤い水草』は西で、奥さんと子供たちといっしょに暮らしていました。
『赤い水草』一家は、みんながあまり食べないかたい草を食べて暮らしていました。
あるときそこに『ナマズとくらす人たち』がやって来ました。
『ナマズとくらす人たち』は言いました。
「わたしたちの国の人にならないか?」 と。
『赤い水草』は最初、『国』とは何かがわかりませんでした。
でも、かたい草ばかり食べなくても良くなると、『ナマズとくらす人たち』が言いました。
かたい草を食べられるようにするのは、ちょっとたいへんです。
『赤い水草』は、楽な暮らしがしたいなと思いました。
『赤い水草』は『ナマズとくらす人たちの国の人』になりました。
『ナマズとくらす人たちの国』には、おいしくてやわらかい食べものがありました。
でもそこでずっと暮らすためには、『お金』が必要だと言われました。
『赤い水草』は最初、『お金』とは何かがわかりませんでした。
でも『赤い水草』が『ナマズとくらす人たちの国の人』になってわかったことが、ひとつだけありました。
それは、みんながあまり食べないかたい草は、そんなに美味しくはないんだってことです。
やっぱり食べるなら、おいしい食べもののほうが良いものです。
『赤い水草』は、お金を集めることにしました。
『赤い水草』が 「何をすればお金をたくさん集められるの?」 と聞くと、『ナマズとくらす人たち』は 「兵士になると良い」 と言いました。
『赤い水草』は『ナマズとくらす人たちの国』の兵士になりました。
『赤い水草』は兵士になって、家族と はなればなれ になりました。
『赤い水草』は色んな土地に行っては、そこにいる人たちに 「自分たちの国の人にならないか?」 と聞きました。
そして 「イヤだ」 と言った人たちをつかまえました。
つかまった人たちは、『ナマズとくらす人たち』の市場で売られます。
でも、市場から逃げだす人たちもいました。
『赤い水草』は、市場から逃げだした人をつかまえて殺しました。
『赤い水草』は、兵士がイヤになって逃げた人を、つかまえて殺しました。
『ナマズとくらす人たちの国』がイヤになって逃げた人を、つかまえて殺しました。
毎日、たくさんの人を殺しました。
『赤い水草』は、たくさんのお金をもらいました。
でも家族には会えません。
『赤い水草』は『ナマズとくらす人たち』に、どうすれば兵士をやめられるか聞きました。
『ナマズとくらす人たち』は 「それならもっとたくさんのお金が必要だ」 と言いました。
もっとたくさんのお金を集めるためには、もっとたくさんの人を殺さないといけません。
そしてそのあいだ、ずっと家族に会えません。
『赤い水草』は、兵士でいるのがイヤになって、逃げだしました。
逃げて逃げて、乾いた土地を何日も何日も歩いて、『赤い水草』はようやく『西からにげてきた人たちのむら』に着きました。
でも『赤い水草』は、1人です。
家族はまだ『ナマズとくらす人たちの国』にいます。
『赤い水草』は家族に会いたくて、お金を集めることにしました。
お金がたくさんあれば、逃げたこともゆるしてもらえるはずです。
お金がたくさんあれば、家族といっしょに逃げても良いはずです。
そして『ナマズとくらす人たちの国の人』なんかやめて、もう一度、みんなでかたい草を食べて暮らしたいと思いました。
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