みずうみを守る人たち -4




穴の中を歩いていた『ウシどろぼう』は、あることを見て、とてもおどろきました。

それは、穴の中でも玉蹴りをしている人たちがいたからです。


穴の中は、地面の上みたいに広いわけでも、高いわけでもありません。

右にも左にも上にも土の壁があります。

そんな場所で玉蹴りをしようなんて、『ウシどろぼう』は思いませんでした。

玉蹴りは地面の上でするものだと思っていました。


穴の中の玉蹴りは、めちゃくちゃです。

蹴った玉が、すぐにどこかの壁にぶつかって、めちゃくちゃにはね回るんです。

でもそのめちゃくちゃにはね回るのが、面白いんです。


慣れてくれば、玉がどんなふうにはねるのかも、わかってきます。

「あの玉はあの壁でこういうふうにはね返るから、次に玉を蹴るにはあそこに走れば良い」

そんなことがわかってくると、穴の中の玉蹴りは、とても面白くなります。

今まで知らなかった玉蹴りを知れて、『ウシどろぼう』はとてもうれしそうです。


穴を掘っている人は地面の上にもいましたが、もちろん穴の中にだっています。

穴を掘っていると、地面の中に隠れていた『何か』を見つけることが、たまにあります。

化石って言う、昔の動物の骨が石になったものも、たまに見つかります。


穴の中には、見つけた化石を並べる部屋もあります。

そこには 「これがこの動物の頭で、これがこの動物の足で……」 と言いながら、骨を並べている人がいます。

骨をきれいに並べることが出来ると、ちゃんと動物の形になって面白いものです。


そして、その動物は一体なんの動物で、どんなふうに生きていて、どうして死んだのかを考えます。

そのこたえは、並べた骨の中にあります。

骨をよく見て調べれば、それがわかります。


体を使って玉蹴りで遊ぶのも面白いですが、頭を使って昔の動物のことを考えるのも、とても面白いものです。

よく見てよく考えると、今まで見えなかったものが見えるようになるんです。

それはすごく、たのしい遊びです。


ところで、穴の中は真っ暗なわけじゃありません。

電気がついています(これもメガミさまのおかげです)。

畑だってあります。

何かものを作ろうと思えば、それを作る場所もあります。


穴の中は暑すぎないし、寒すぎなくて、ちょうど良い感じです。

体を使って遊ぶ場所もあるし、頭を使って遊ぶことも出来ます。


人があちこちにいて、おしゃべりをすることも出来ます。

1人になりたいときは、1人になれる部屋もたくさんあります。


メガミさまのはたらきで、誰かのおしっこがキレイな水に変わります。

やろうと思えば、穴の中で毎日たのしく、楽に暮らすことが出来ます。


『ウシどろぼう』は『ヒヅメ』に自分の気持ちを伝えました。


「ここは良いむらだね」

「ああ」




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