みずうみを守る人たち -2


3人はそれからも歩き続けました。

すると『ヒヅメ』が 「もうすぐ、むらだ」 と『ウシどろぼう』に伝えました。

『ウシどろぼう』は牛の目を借りて、周りを見てみました。

でも、むらなんてどこにも見えません。


『ヒヅメ』が言います。


「穴に気をつけて。穴に足を取られて骨を折らないように」

「穴? ……あぁ! 穴だね!」


『ヒヅメ』たちのむらは穴の中、地面の下にあります。

むらは、たくさんの穴でつながっていて、迷路のようです。

『ヒヅメ』は穴の中の様子を、『ウシどろぼう』に見せてあげました。


『ウシどろぼう』は知らないことを知るのが大好きです。

『ヒヅメ』に見せてもらった穴の中の様子を、たのしそうにながめています。

でも今は、牛の目を借りて歩かないといけません。

穴に落っこちたりしないように、です。


しばらく歩いていると、『ヒヅメ』と同じ『毛のある人』が見えました。

『かわいたキツネ』も見えます。

『毛のある人』と『かわいたキツネ』たちは、湖のほうへ歩いて行きます。

『ウシどろぼう』は『ヒヅメ』と手をつなぎました。


「あの人たちは何をしに行くの?」

「湖を直しに行くんだ」

「湖、こわれたの?」

「ああ。この前、こわれたんだ」

「こわれた湖を直すの?」

「ああ。直してほしいって、たのまれたから」

「そうか、それも自然なことだね。じゃあ、たのまれなかったら直さない?」

「そうだな」

「じゃあ、たのまれてないけど『直したいな』って思ったときは?」

「直す」

「それも自然だね」


むらまでは、あともう少しです。

でも『ウシどろぼう』がつかれたので、休むことにしました。

『ヒヅメ』は牛に乗っていますが、『ウシどろぼう』は牛に乗っていません。

たくさん歩いた『ウシどろぼう』は、つかれています。


牛は『ウシどろぼう』を乗せてあげることが出来ます。

でも牛は、はじめて会った人を背中に乗せるのが、はずかしいようです。

だから『ウシどろぼう』は、牛の目だけ借りてずっと歩いていたんです。


「はぁつかれた」と、『ウシどろぼう』が座りました。


すると、牛がおしっこをしました。

『鼻にぶちのあるの牛』のおしっこは、白いかたまりです。

水は出しません。

水は大切なので、おしっこで捨ててしまうのはもったいないんです。


それを見ていた『ウシどろぼう』も、おしっこをしたくなりました。

『ウシどろぼう』は『ヒヅメ』に 「メガミさまはある?」 と聞きました。

『ヒヅメ』は 「ある」 とこたえました。

そして『ウシどろぼう』の手を引いて歩きます。

ある穴の前で立ち止まると、『ヒヅメ』は言いました。


「この穴の下にメガミさまがある。(あなたは)ここにおしっこをして」

「ありがとう」


『ウシどろぼう』のおしっこは水です。

水は大切なものです。

水のおしっこをそのまま捨ててしまうともったいないので、メガミさまに入れます。

メガミさまはおしっこからキレイな水と電気を作ってくれます。

電気があると、暮らしが楽ちんになります。


メガミさまは、空気の中とか土の中にあるちょっとした水も集めてくれます。

メガミさまが集めた水を使うので、『ヒヅメ』のむらの人たちは、湖に水をくみに行かなくても良いんです。


『ヒヅメ』は穴の中に下りて、メガミさまが集めた水をくんできました。

それを『ウシどろぼう』に飲ませてあげました。


「ありがとう。『ヒヅメ』たちは水を飲まないの?」

「水なら5日前に飲んだからまだ平気だ」

「あなたたちの体は、乾いた土地で生きやすいようになっているんだね」

「ああ。水は大事に使っている」


休んで、おしっこをして、水を飲んで、少しおしゃべりもしました。

『ウシどろぼう』は元気がわいてきました。


さぁあと少し。

『ヒヅメ』たちは、また歩きはじめました。




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