むかしばなし
むかしむかし 空が晴れていたころのお話
ある日、おひさまが風邪をひいた
おひさまは「そのうち治るよ」と言った
おひさまが元気になるまでのあいだ
みんなはケンカをやめて
毎日をもっと楽しくした
みんなは地面を揺らしたり
火の海に家を建てたりして
どこでも好きなところに行けるようになった
波に飲まれそうなところは
そっと逃がしてあげたりした
空の下からいなくなった形もある
なくなった形はみんなのためになった
みんなは自分の畑を作って
海で食べないことにした
土で食べないことにした
みんなは空の下が元気になれば良いなと思った
『わたしたちにとってはよくないもの』が
どこでも好きなところに行けるようになった
ごはんも『よくないもの』になった
『よくないもの』の真似をした
『鏡の中のよくないもの』が
みんなの暮らしをちょん切った
みんなは好きなところに行けなくなって
好きな人とおしゃべりが出来なくなった
地面が揺れて海が火を噴いた
空の下は温かくなって寒くなった
海はしょっぱくなくなって凍った
海の下の土もみんなみんな凍った
『よくないもの』をどうしようか
みんなは毎日たくさんの話をした
どうぶつは新しくなった
木も草も花も新しくなった
みんなも新しくなることにした
新しいどうぶつと新しい木と草と花と
一緒に暮らしてみんなは新しくなった
『みえないもの』も見えるようになった
王様も大臣も乞食もみんないなくなった
おひさまの風邪が治るまであと少し
わたしたちは今日もくもり空の下で
あたたかくして暮らしている
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