人。

わたしと手をつないでくれてありがとう。

今日は人のこと。それをあなたに伝えますね。


あなたたちの時代の『人』ってなんですか?

『ヒト』って言う名前の動物のことですか?

それともあなたの時代ではもう、機械や、絵の中の人も『人』ですか?


わたしたちの時代の『人』は、ヒトって言う名前の動物よりも、もう少し多くの生き物のことを呼ぶための名前です。


わたしたちの時代は、牛も『人』です。

亀も『人』です。

象も、それから人も。


でもちゃんと牛も、亀も、象もいます。

それとは別に牛の人、亀の人、象の人がいます。


牛の人って言っても、人みたいに2本足で立って歩いてしゃべる訳じゃありません。

4本足の牛です。

牛も、牛の人も、姿形は牛です。


「それじゃあ何が人なんだ」 って、あなたは思うかもしれませんね。

あなたは自分がどうして『人』なのかわかりますか?


人の姿形をしているから?

それじゃあ人形も人になりますよね。

でも人形は人じゃありません。


火を使ったり道具を使ったりするから?

火を使う鳥もいます。

道具を使うネズミもいます。

でも鳥もネズミも人じゃありません。


言葉を使ってものを考えるから?

でも同じ人でも、何を言っているのかわからない人もいます。

同じ人でも、何を考えているのかよくわからない人もいます。

でもその人たちは人です。

だからわたしたちから見て、何を言っているかわからなくたって、何を考えているのかわからなくたって 「動物が言葉を使ってものを考えてない」 とは言えません。

動物も、言葉を使ってものを考えているかもしれません。

動物だって、怒ったり泣いたりすることもあります。


そうやって考えると『人』ってなんだろうって、思います。

わたしたちは 「動物だってものを考えるけど、ものの考え方がちがうだけだよね」 って思うことにしました。

だからわたしたちは『人』と同じような考え方をしてくれる生き物のことを『人』と呼ぶことにしました。


『人』と同じような考え方をしてくれるなら牛の人です。

『人』と同じような考え方をしないのなら牛です。


そんなの、どうやったらわかるのか、って?

簡単です。手をつないでみることです。

わたしとあなたが今、そうしているように。


ただ、4本足の動物の前脚と手をつないでみても、何もわかりません。

その動物の『得意なところ』と手をつなぎます。

たとえば象の得意なところは、鼻です。


その動物の『得意なところ』と手をつなげば、わたしたちはその動物の考え方を知ることが出来ます。

それで 「ああこの牛は『人』なんだな」 ってわかります。


でも手をつなぐ前にわかることもあります。

手にかみついてきたら、それはたぶん動物です。

それか、怒っている『人』です。


怒っている人、嫌っている人、こわがっている人。

そう言う人が手をつないでくれないのは、人も動物もおんなじです。


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