第11話

「そういえばね。今日の朝、母さんが・・」


母さんが・・

朝のことを思い出した瞬間、昨日の病院での出来事も蘇った。

病気・・現実・・

言わないといけないのかな・・・

どうやって・・


「麻也ちゃん?」


「ああごめんね」


「どうかしたの?眠い?」


「・・・ちょっと質問」


「なんだい?何でも聞きなさい」

胸を張って背景にどやっと効果音がついている。

そんな優紀に私はいつも頼ってしまう。


「もし、あと一年で死んでしまうとしたら・・貴方は何をする?」


「・・・ちょっと意味が・・」


「んーつまり。死ぬまでにしたいこと!」


「そうだね・・・働いて稼いだお金で海外旅行して・・」


私は叶わなそう・・成人まで私であと6年・・


「定年退職で退職金がっぽりもらって・・」


諦めぐせのついている優紀にはそれは・・と言おうとしてしまったが寸前のところで終わった。

・・危ない・・優紀が怒ったら手がつけられない・・


「そういえば結婚はしないの?」


「え?するの?」


「え?」


「え?」


「・・ああそっか。優紀は結婚しないって言い張ってたもんね・・」


「うん、それに医者になったらお休みとか取れないと思うし。もし家族ができたら仕事辞めないといけないから・・」


本気で将来の事を考えている真剣な表情が私は好きだ。

優紀のこの表情を見ていると胸のなかがほっこりしてくる。

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