第10話 会話

「遅いよ麻也ちゃん」


「ごめんごめん・・今日は優紀(ゆうき)が早かったんだよ」


それもそうだねと笑うこの少女は隣の家に住む吉川優紀。


毎朝一緒に登校している、小学5年生だ。

いつもであれば私が優紀を待つのだが今日は早く起きたらしい。


「何か変な夢でも見たの?」


「見てないけど・・どうして?」


「目、赤い」


「嘘・・まだあと残ってたか・・」


「・・泣いたの?」


「寝てるときに・・無意識だと思う。母さんとケンカしてね」


「珍しいね。麻也ちゃんって親とケンカするの初めてなんじゃないの」


「そう・・かも・・」


覚えていないが友人の中では一番付き合いが長く一番私のことを知ってくれている優紀が言うことだ。

間違いないだろう。


「どうしてケンカ今までしてこなかったの?」


「え?」


「いや悪い意味じゃないんだけど・・家なんておにいと毎日ケンカして毎日母さんに怒られてるよ・・」


「どうやったらケンカせずに過ごせるの?教えて!」


何かGoogleに聞くときみたい・・


「私はGoogle先生じゃないんだから急にそんなこと言われても・・」


「本当に?本当に心当たりないの?」


・・どうしてだろう・・例えば


「お互いに認め合うとか・・?」


「・・・・・・・」


うわー優紀さん・・

その顔は無いよ・・

絶対に無理って顔してる・・


「優紀さんや、顔に出すぎぞい。少しは隠しなさい」


私は優紀の帽子を深く被らせた。


「ちょっとー前が見えないよー」


優紀はすぐに帽子を上げ、また話し始めた。


「他にはない?」


「そうだね~じゃあ逆に話しかけない。相手から話しかけられたら相づち打ってスルー」


「それだ!!」


優紀がビシッと指を指して叫んだ。


私はさりげなくその指を下ろさせてそんなのでいいの?と聞いた。


「いいのいいの!・・あー、おにいのことで悩んだ自分が馬鹿みたい・・」


「それで対策できるの?」


「出来る!あんな猿みたいな人。いやお猿さんに悪いな」


「扱い雑!」


「あーあ、麻也ちゃんがお姉ちゃんだったらいいのに・・」


ありがとう、そう言って二人で笑う。

いつもと変わらないけどとても楽しい。

友達との会話は絶対に飽きない。

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