第9話 涙の跡



次の日、日光を浴びて目を覚ます。

スッキリとした朝だが何故か視界が狭い。

ひとまず洗面所に向かった。


そこで彼女は驚くべき物を見つけた。

目がパンパンに腫れ涙の痕をつけた自分の顔が映った鏡・・


登校時間まであと二十分になり真っ青な顔をしながら振り向くと同じように

ああ・・という顔をした母さんと目があう。


言葉は交わさなかった。


ケンカ中の彼女たちであったが一時休戦。


目を温めたり冷やしたり試行錯誤しながら顔を治す二人からは笑顔が溢れていた。



(・・その笑顔の大半が呆れ笑い、苦笑い・・)



顔を治すことに手を尽くして十五分。


出来る手は尽くしたと母さんが椅子にもたれ掛かっていた。


私は一度鏡で確認し部屋に戻った。


時間割の最終確認をし、ランドセルを背負う。

今日は少し重め。


月曜日で体育もあるため体操服も持っていかなければいけない。


・・そういえば体育は久しぶりだ。

今まで雨で中止、体育館でも使用割りが被りまたまた中止。


本当に久しぶりだ。


ピーンポーン


おっと、もう約束の時間らしい。

急がねば。


サササササと荷物をまとめると階段を降りた。

あらら、母さんまだいたんだ。


さっきと見事に変わらぬ場所、姿で座る母さんは微動だにしない。


ちょっと待って・・なんか灰になりかけてね?!


そんなに疲れてたのか・・


まあ昨日も朝もごちゃごちゃだったから・・


母さんに近づき顔を覗くと、スヤスヤと寝息をたてている。


寝落ちかよ!


「ふふっ・・・ありがと、母さん」


照れ臭くて少し小声になったが感謝を伝えるのは大事だよね。


私は玄関のドアを開け外に出た。

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