第14話 悪い予感は大抵当たる

俺はその翌週もまた、土日を使って凛に勉強を教わるようになっていた。


段々と慣れてきた俺は普通に朝帰りなんかする事なく、夕方頃、帰るようになっていた。凛のおかげで最近勉強がよくわかるように


しかし、その時、嫌な予感がしたんだ。


ガサゴソと茂みから音がした。


「ん?」


「や、やばっ!」


 スマホを手に持った女の子が走り出していく。制服を着ていたような気がする。同じ学園の制服だ。


もしかして、付けられていたのか。凛は学園の女神様と言われる有名人だ。だから話題性のある人物だ。俺自身には話題性はないが。

だが、そんな有名人でも少しでも落ち度や叩きどころがあるとニュースになってしまうことがあった。


学園には新聞部という部があった。学園内のゴシップニュースなんかを垂れ流す、ある意味悪名高い部である。


もしかしたらさっき逃げて行った女子生徒はその新聞部の生徒かもしれない。


もし、凛に恋人ができたと噂されれば。その人物がもしスクールカースト最上位のお似合いの人物だったら、前向きなニュースとして報道されるだろう。


だか、俺はそうではない。スクールカースト最下位の陰キャだ。


前向きな明るいニュースになる事はない。


まずいな……これは何かあるのかもしれない。俺はそう思うようになっていた。


そして俺は翌日、学園に行く。やはり悪い予感は適中するものであった。



「号外!号外だよ!」


快活な声がした。校門の前には少女がいた。新聞部の部長である神楽坂美琴である。


快活な印象を持つ少女だ。知的好奇心が強そうで行動的。確かに新聞部の部長には相応しいかもしれない。


ただ、記事にされる身からすると傍迷惑ではあったが。本人達は真実を追求するためなど正当性を主張し続けている。


「なんと! あの学園の女神こと望月凛に熱愛疑惑だよ! お相手はなんと!」


 風で新聞が舞ってくる。俺はそれを受け取った。


そこに映っていたのは俺と凛が抱きついている姿である。まずい。もしかしたら会った時から新聞部の奴がその場にいたのか。これは凛と初めて会った時の写真。


それに俺と凛が部屋で勉強しているシーンも撮影されている。


け、かど、これってプライバシーの侵害だろ。


文句を言ってももう遅い。皆、知ってしまったのだ。俺と凛が懇意であること。それどころか、付き合ってるとすら思っていることだろう。


ひそひそと噂話をされる。


(やだー。望月さん、ほんとー!?)


(男の趣味悪すぎたろ。なんであんな底辺なんかと)


(ありえないだろ、あんな地味な奴)


(けど、写真はでは間違いなく)


(合成とかじゃねーの?)


(ははっ。なにそれありそー。新聞部の話題作り? あいつらもネタ切れなんだな)


皆面白可笑しく会話をしていた。


ま、まずい。恐れていた事態が起こってしまった。凛にあらぬ疑いをかけてしまった。


しかし。俺自身の身にも更なるトラブルが起きるのであった。



それは放課後の事であった。クラスに不良生徒みたいな、いわゆるDQNと言われる生徒数名が押し寄せてきたのである。


進学校でもこの手の生徒は一定数いるものであった。


「菊池ってやつどいつだ!?」


誰も答えないが視線で俺とわかってしまった。一応写真にも写っていた事ではあるし。誤魔化すのは困難だった。


「ツラ貸せよ、おらっ!」


こうして俺はDQN数名に校舎裏まで連行されていくのであった。


ど、どうなるんだ、俺はこれから。恐怖に慄きながらも、俺は私刑の判決を待つのであった。

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