第3話 二人だけのオフ会になぜか女神様現る
その日、DMで約束していたオフ会の日だった。10時に〇〇駅の駅前に集合という事であった。
正直、やる気はなかった。何せ、相手の素性も何も全くわからないのだ。もしかしたら、いや、もしかしなくても。相手は腹の出た中年のおっさんかもしれない。それだけならまだいい。
もしかしたら反社会勢力の輩の可能性も僅かではあるがあった。例えば麻薬関係で取引を持ち込まれたり、振り込め詐欺の出し子を探してたりとか。
まあ、その可能性は僅かにあったが。少し考えすぎか。後の八割くらいは俺と同じ暇な高校生か大学生である。
ソシャゲくらいしかやる事のない底辺だ。ぶっちゃけそう、俺は底辺である。スクールカーストを登りあがる為の『勉強』や『運動』を放棄し、自堕落にソシャゲにのめる込んでいるだけの底辺。
社会的には何の評価も受けない『ソシャゲ』にありとあらゆるリソースを投下している自分は正直に言えばただの底辺なのだ。社会的には。学園という社会の中では俺はなんて事のない石コロに過ぎない。
この前会った『望月凛』みたいな、スクールカースト最上位の人間からすればそう。
俺は道端に落ちている石コロ以外の何物でもなかった。
俺は約束場所に30分ほど早く着いた。相手がやばい奴の可能性もあるが、それでも同じ年くらいの男子高校生である可能性はあった。
そうすれば友達になれるかもしれない。どんだけ友達に飢えてるんだよ、俺。まあ、俺は友達ゼロ人のコミュ障ぼっちだからな。学校に友達なんて一人もいないんだ。ソシャゲが友達みたいなもんだ。なんか、キャ〇翼の翼君みたいだな。
待ち合わせ時間までにあと、10分の時であった。公園の前に一台のリムジンが現れる。
あのリムジン、俺は見覚えがあった。そう、学園の前に現れたあのリムジンである。
周りの大人たちも驚いていた。リムジンである。きっと滅多に見たいのだろう。そのリムジンから降り立ってきた人物は俺の予想していた通りの人物であった。
学園の女神様。容姿、能力、財力。俺が持っていない全てを神から授けられたスクールカースト最上位の少女。
……な、なんで、望月凛が。俺は驚き、慌てふためいた。
しかもリムジンを降りた凛が俺のすぐ近くまで歩み寄ってくるのである。
うっ……近い。しかも夏場だったという事もあり、望月凛は薄手のワンピースを着ていた。その白い肌が余計に眩しく映った。
あまりに神々しく、近くに俺なんて存在がいる事だけでも申し訳なくなる。同じ空間の空気を吸っているだけで、罪悪感を感じてくるのだ。何も悪い事はしていないのに。
そのうち、待ち合わせ時間になった。
遅いなぁ。なかなかそれらしい人は現れない。俺の予想では『RIN』さんは腹の出た中年サラリーマンか、フリーター。あるいは度の強い眼鏡をした引きこもり気味の大学生、あるいは俺みたいな高校生を予想してたんだけどなぁ。
仕方ないな。俺はソシャゲ内のDM機能を使う。
『もう待ち合わせ場所着いています』
そのうち返信がきた。ちなみに隣にいる望月凛もソシャゲをいじっている。
『私もです』
ん? なんだ。着いているのか。確かに待ち合わせ場所にはそれなりに多くの人たちがいる。待ち合わせ場所になっているのだから当然か。
でも俺が予想していた『それっぽい』人はいなかったな。それっぽい人っていうのはいわば俺みたいな。人生投げていて、それでソシャゲの没入しているような感じの連中の事だ。
『じゃあ、俺、手あげるからRINさんも手あげて』
『はい。わかりました』
俺がDMを送るとそう返事があった。
俺は手を挙げる。
ん? しかしそれらしい人物は見当たらないな。手をあげている人。俺は周囲を見渡した。
俺は見ていなかった真横を見る。すると望月凛が手を挙げたのだ。
「なっ!」
「えっ!?」
俺は驚いて声をあげた。
う、嘘だろ――ま、まさかだとは思うけど。今日のオフ会の相手って、あの学園の女神様事。
『望月凛』なのか!?
時が止まったような気がした。それ同時に俺の心臓さえも止まってしまうんじゃないかとすら思えた。
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