第拾四話 スチーム、初めての技
『この肌触りがいいね』と私が感じたから五月二十六日はトランクス記念日。
先日、初めてトランクスを購入して思わずパクってしまった短歌である。
もちろん自分用。初ブラならぬ初トラ。思いがけず語感の似ている不思議よ。
第壱話で自分語りをしたように、皮膚炎が未だ治らず、春にちょっと落ち着いていたのがぶり返し、ショーツの脚の付け根があたる部分が痒くてたまらない(ぶり返しのそもそもの原因は第拾弐話で書いた老猫との添い寝に使用した布団だろうと当たりをつけている。リビングで眠るために押し入れから引っ張り出したものであり、ハウスダストやダニのアレルギーを持つ私の大敵であった。猫は悪くない)。
物理的な原因がわかっているのならば、断つのは難しくない。老猫の体調も持ち直し、布団は再び押し入れに押し入れられた。あとは、いたるところにゴムが仕込んであるショーツとさよなら、新しい出会いを求めるまで。
このショーツ問題Twitterで呟いたらば、ふんどしをおすすめしてくだすった方がいたが、あやとりが苦手な私にはやや難易度が高い。そこで女性用トランクスに目星をつけるが、ネットで検索してみるとこちらは値段がお高い。
男性用なら二束三文、足下を見おって、いやわかるのよ女性のことを考え濃やかな気遣いがされているのは、でもまだお試しで一枚二千円はあまりにむごい。もう殿方用でもいいじゃない、でも児童文学『ガラスのうさぎ』で兄のお下がり下着に刺繍をした主人公敏子の気持ちを考えると気が引ける。令和と昭和、時代が違えど、女子は女子。でも現代はレインボーでダイバーシティで、かわいいものは女子のものだけでなく、カッコイイもしかり。とまあ、ぐじぐじぐずぐず悩んでいたところ、ユニクロでワゴン売りの値下げトランクスと遭遇し「これは夫のですよ」顔で購入した。うん、楽です、トランクス。
かように、私は齢ウン歳にして初トラを迎えたのであった。
使い古された言葉だが、いくつになっても〝初めて〟はある。
そしてこの度、私はホットクックでも初めての機能に挑戦した(無理矢理な展開とは承知しつつも押し通す)。すなわち【
第拾弐話の『低温調理』と同様、なんか玄人っぽい調理法。いつかはやるぞと決意しつつ、なんとなく億劫だった
正直、【蒸す】とは地味な調理法だと思っていた。レパートリーもあんまりない。っていうかない。蒸しパン、蒸かし芋、プリン、茶碗蒸し、蒸し野菜、あとは肉まん、あんまん、焼売の温め直しぐらい、いまいち主菜になりにくい。
考えながらメニュー集をペラペラ捲り──これだと手を止める。最近、肉が続いていた胃にも嬉しい。
目に留めたのは『ホイル蒸し』である。レシピには『海の幸のホイル蒸し』とありホタテやらエビやらが高級食材が具材にあげられているが、我がお財布事情では白身魚の切り身と冷蔵庫の残り野菜が妥当。
今回はおつとめ品、鱈の切り身を使用。アルミホイルを広げて、軽く塩胡椒した切り身を置く。そして手で割いたヒラタケ、人参の薄切りを上に並べる。青菜があればより見た目美しく栄養
さて、レシピでは味付けはポン酢醤油だったが、ここはアレンジする。酒、醤油(少なめ)、そして味噌とバターを載せてアルミホイルで包み、仕込みは完了、超簡単。
内鍋に水200ミリリットル加え、付属の蒸し板をセットしてその上に木の葉型に包んだアルミホイルを乗っける。手動メニュー【蒸し板を使って蒸す】で22分セットぴ。あっという間に出来上がりだ。
蒸し器の大鍋に湯を沸かすという手間がないため、楽に感じられた。ホイル包みで内鍋も汚れないから洗い物が少なくて済む。
さて、肝心のお味は・・・・・・アルミホイルを開けば、ほわっと香る、味噌とバターの芳醇な香り。バターを入れたら大概の料理は美味しくなるというのは真理である。
淡泊な白身に味噌がよく合い、ヒラタケエキスと調味料が混ざり合って汁まで美味しい。中身をちょいちょい入れ替えたり、タレを工夫したりと、応用もできよう。これはスタンダードメニューの仲間入りだ。
〝初めて〟には色々と面倒がつきまとうが、新たなスタンダードに出会えるのは、望外の喜びである。
『ホイル蒸し』の後、業務スーパーで買った冷凍海鮮ジュウマイも蒸し直しをしたが、ふっくらしっとりあつあつで美味しかった。【蒸す】への敷居が低くなったのは喜ばしいことである。
ところで、私はまた〝初めて〟に挑戦している。トランクスはまあまあ調子が良かったのだが、腰の部分がこすれて痒みを誘発する。あとほんの少し快方に向かえば、履けそうなのだが。
となれば、初トラの次は・・・・・・まあ、お察しいただけると思う。ふんどしではなく、それを超える究極のストレスフリー。とりあえずは先週末の休日二日間実行したが、大変具合が良かったことを記しておく。仕事中はともかく寝る時はこれで良いのではと思う。まあ、身体的に無理な期間もあるのだけれど。
それにつけても、毎日顔を合わせる職場の同僚には下着事情なぞ話さないのに、
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