第4話4
恒輝と明人は見詰め合ったまま、教室は暫くシーンと静まり返ったままだった。
そこにクラ担が、ささっと畳み込む様に本当に軽く言った。
「おー!彩峰!西島と友達になりたいのか。じゃー西島、彩峰の事頼んだぞ。それじゃぁ、授業を始める。彩峰、お前背が高いから、あの一番後ろの空いてる席な!」
恒輝が問題児だと、クラ担は知ってるはずなのに…
結局、恒輝の返事など聞かずお構い無しに明人が席に着かされ、古文の授業が何も無かったかの様に始まった。
やがてチャイムが鳴り、休憩時間になる
。
恒輝は、いつも授業など余り聞いてないが、明人の所為で余計に何も耳に入ってこなかった。
悪友二人が心配して恒輝の座ったままの席に向かうとしたが、結局行けなかった
。
一足先に明人が恒輝の前に立ったから。
「久しぶり…俺の事…覚えてる?」
明人は、優し気に微笑み、その声は明るい。
恒輝は、不機嫌そうな目で座席から明人をシゲシゲと見上げた。
明人の…すっと通った鼻筋。
大きく美しい瞳。
形が良く品が有り、けれどどこか色気のある唇。
そして、恒輝が初めて会った時は気付かなかったが、口の左下に小さいホクロがあって、それが増々明人に妖しいエロスを与えている。
恒輝は、なんだか分からないがいつの間にか無意識に、一途に食い入る様に見てしまっていた。
明人は、その恒輝の表情を見て、静かに笑みを深めた。
しかし突然、恒輝は、自分のアルファの両親と、その両方それぞれがフェロモンに誘惑されて囲う多数の愛人のオメガを思い出し、慌てて分からない様に自分に喝を入れた。
(コイツは、オメガなんだ!)
(所詮、フェロモンの出ない俺以外のアルファのフェロモンにも簡単に発情する
…フェロモンには、絶対逆らえない…)
(もう、アルファとか、オメガとかに関わるのは、こっちはクソくらえなんだよ
!)
(しかも、やっぱこいつ背高けー!腹立つわー!)
167センチの恒輝が初対面に感じた明人との背の違いは、10センチ所では無かった。
恒輝がこんな事を内心考えてるとも知らないだろう明人は、ニコニコしながら恒輝の返事を待っている。
そこに、さっと誰かが入って来た。
「ダメダメ!彩峰君!西島君の友達になろうと思うなら、もっとヤンキーぽくなくちゃついてけないし、彩峰君には絶対似合わないよぉ!」
横から、超ミニスカ巨乳女子のベータの長野が、カースト上位のキラキラのベータの男女のいつもの連れ5人を引き連れ声を掛けて来た。
恒輝と明人がそちらを見ると、長野は、
美少女アイドルっぽい小悪魔的な顔に満面の笑みを浮かべた。
(あぁ〜〜〜あ?チッ!何が、彩峰君には絶対似合わないよぉ…だ!俺の事、バカにしてんだろ?この女!)
恒輝は、不機嫌さを増幅させた。
そして、ちょっと、バンっと机でも叩いて驚かせてやろうとしたが…
「彩峰君、良かったら、西島君の代わりに私達が色々ここの事教えるよ!」
普通の男なら、この長野の甘ったるい声の言葉だけで完落ちしていただろうが、明人は、何の感情も無いかの様にただ真顔だ。
「ねっ!彩峰君!」
校則ギリギリの色のグロスの濡れた唇の口角を上げ、更に長野が明人の左腕に自分の両腕を絡ませ近くに寄った。
(おっ…おっ…おっ○いが…!)
恒輝の目に、長野の胸が明人の腕にぐいぐい当たって更に盛り上がっているのが飛び込んできた。
立派なオスの本能の部分が刺激されてしまったのに恒輝は目を剥いて、内心アワアワと小学生のように焦る。
だが、されるがまま真顔の明人の方を見たら、どうしてか自分で分からないが更に激しくイライラとしてきて内心舌打ちして思う。
(チッ!いつまで腕、胸に当ててんだよ
!)
「おい!彩峰!ちょっと…顔貸せ!」
恒輝が凄んで言うと、キッと明人と長野の絡まる腕と巨乳を睨んで教室を出て行く。
明人は長野に、「ごめんね」と優しく微笑み言って腕を解いてその後を追った。
「ちょっ、ちょっとぉ!彩峰君!ダメだって!」
長野は、眉根を寄せて叫んだが、恒輝と明人を遠巻きに見ていた他のクラスメイト同様、その場に立ち尽くすしか無かった。
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