第51話051「目的」
「私の名は
「⋯⋯
トーヤは『
「ど、どうしたんだ、トーヤ? そんな青い顔をして⋯⋯」
「そ、そうだよ、お兄ちゃん。この黒フードの男がなんだっていうのさ?」
「っ!? お、お前たち⋯⋯感じないのか? この男に対して何も⋯⋯」
「「??」」
二人はトーヤの問いに困惑した表情を返す。
「フフ⋯⋯まあ、仕方ないのよ、トーヤちゃん。わからないのがほとんどですから。それにしてもトーヤちゃんは私の『核』をきちんと感知したようね。やっぱりトーヤちゃんで間違いないですね。やっと⋯⋯やっと出会えました」
「出会えた?」
「トーヤちゃん。あなたは私がずっと探し求めていた『宝物』なのですよ?」
「た、『宝物』? な、なにを⋯⋯言って⋯⋯」
「お? どうやら来たみたいですね」
「来た? なにが⋯⋯」
「皆、無事かっ!」
「リカ・ブリッジストーンっ!」
入ってきたのはSランカー冒険者のリカ・ブリッジストーン。
「お久しぶりですね、リカちゃん?」
「っ?! き、きさまは⋯⋯
「し、知ってるのか! リカ・ブリッジストーン⋯⋯」
「⋯⋯あ、ああ。まあな」
「?」
リカはトーヤの問いに表情を曇らせながら返事をする。
「さて⋯⋯役者が揃いましたね」
異様な雰囲気の中、
「リカちゃんはすでにご存知でしょうが他の方はまだ知らないのでご挨拶を。私の名は
「「「「「ま⋯⋯っ!? 魔族っ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」
そこにいた者のほとんどが『魔族』という言葉に激しく反応する。
「あー大丈夫ですよ。別に今日はあなたたちを殺そうと思ってきたわけではないですから。私はね、いろいろと情報を与えにきたのですよ」
「情報?」
「ええ、情報です。例えば、アリス・グレイス・ガルデニアの暗殺計画の情報だったり、第一王子の計画だったり⋯⋯ね?」
「な、なに⋯⋯っ?!」
「ちなみに、そこにいるタオ・リーチェンという男は第一王子であるライオット・グレイス・ガルデニアの計画のもと今回のレナ・リンデンバーグ誘拐を実行しました」
「デ、デタラメを言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 魔族の言葉なぞ、だ、だだだ、誰が信じるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
タオ・リーチェン。
まさに必死の形相で
「うふふ⋯⋯。別に私の言葉など無くともあなたはもうすでに詰んでますよ? そして、私の言葉の真偽を確かめるべく動けばいずれ真実に⋯⋯ライオット・グレイス・ガルデニアに辿り着くでしょう? だから、私はこうしてここにきたのです」
「そ、そんな⋯⋯」
「お、お前は⋯⋯そのために⋯⋯このことを伝えるためだけに⋯⋯ここにきたのか?」
「そうです」
「信じるでないぞ、トーヤ・リンデンバーグ。奴は得体の知れない男だ! 気を許すでないっ!!」
リカ・ブリッジストーンがトーヤに檄を飛ばす。
「おやおや心外ですよ、リカちゃん?」
「リカちゃんって言うなーーーーーっ!!!!!!!!」
リカ・ブリッジストーンが瞬足で
ガキィィィィィィィィィィィィィィン⋯⋯っ!!!!!!!!!
「いきなり大剣を全力で振り下ろすなんてレディーのすることじゃないですよ、リカちゃん?」
「⋯⋯くっ?! 化け物めっ!」
リカの大剣の全力の打ち下ろしを黒い鉄扇のようなもので軽々と受け止める
「「「「「っ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」
トーヤとリカ以外の
「う、うそ⋯⋯でしょ? あのゴウリキよりも⋯⋯全然大したことない感じなのに⋯⋯」
「⋯⋯こ、これが、この黒フード男の本当の実力。トーヤはこれを初見で察知していたってこと⋯⋯か」
そして、レナもラウもまた、この光景を見てトーヤがあれだけ警戒の色を強めたことに納得する。
「う、嘘だろ? 今の攻撃って⋯⋯お前の全力⋯⋯だよな?」
トーヤがリカに話しかける。
「く、悔しいが⋯⋯その通りだ」
「⋯⋯正直、今の俺でもあんな攻撃されて軽々と受け止めることなんて絶対に無理だぞ? そ、そこまで⋯⋯そこまで強いのか、この男は⋯⋯」
「ああ。私は一度この男と戦ったことがあるがまるで相手にならなかった。ちなみに、それはSランカー冒険者となってからの話だからな?」
「な⋯⋯っ?!」
リカの話にトーヤが驚愕する。
「相手にならなかった⋯⋯て、じゃあ、なんであんた生きてるんだ? 殺されなかったのか?」
「それは⋯⋯」
「それはね、トーヤちゃん。あなたの成長にリカちゃんが必要だったからよ」
「何っ!?」
「私はトーヤちゃんを強くすることと、その為に必要な人材と環境を用意するのが目的なの。だから彼女を生かしたってわけ」
「な、何のために⋯⋯何のためにお前は俺を強くしたいんだっ!」
「ごめんね、トーヤちゃん。今は言えないわ。でも、少なくともトーヤちゃんが強くなる分には全面協力するわけだから、ある意味、私を味方と思ってもいいわよ?」
そう言って、
「甘言に惑わされるなよ、トーヤ。この男は強いだけじゃなく得体が知れないのだ。お前を強くする⋯⋯というのも見方を変えれば『トラブルを用意する』ということでもあるんだからな!」
「わ、わわわ、わかってるよ!」
(あぶねー、あぶねー)
トーヤは一瞬、「確かに強くなる分には味方ということであれば心強いかも?」などと、見事に
「何よ、リカちゃん? もっと私を信じてよ?」
「ぬかせ! このオカマ魔族が! それと『リカちゃん』はやめろっ!!」
「えー!『リカちゃん』のほうがかわいいじゃない?」
二人のやり取りに緊張感が少し薄まった。
「⋯⋯で? あんたはそのことを伝えるためだけにここに来たというのならばもう出ていくんだよな?」
「ええ、そうよ。自己紹介もしたしね。後はあなたたち人間が私の言葉の真偽を調べてどうするかを決めればいいわ。あ、一つだけいうとライオット・グレイス・ガルデニアだけど彼⋯⋯⋯⋯もう人間じゃないわよ?」
「何?」
「な⋯⋯っ?!」
「おっと⋯⋯今のはちょっと『言い過ぎ』ちゃったかな? それじゃあね、トーヤちゃん。あ! あと、この人間は頂いていくわね?」
そういうと、
「お、おい! 待て! 今の話はどういう⋯⋯」
「じゃあね⋯⋯トーヤちゃん、リカちゃん」
フッ。
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