第50話050「不可視《インビジブル》」
「俺の妹と友人に⋯⋯何してくれてんだ、コラぁぁっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「お兄ちゃんっ!!!!!!!!!!!!!!!」
「トーヤっ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ドンっ!
ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
トーヤが教室の時よりもさらに強い魔力放出による威圧を勢いよく飛ばした。
「きゃああああああっ!!!!!!!!」
「くっ?! な、なんて⋯⋯威圧だ。教室の時とは全然違う!? あ、あの時、トーヤは⋯⋯⋯⋯あれで手加減していたのか!?」
ラウもレナもトーヤの威圧に全く動けないでいた。しかし、
「⋯⋯ほう? 中々の威圧じゃないか? お前がトーヤ・リンデンバーグか?」
ゴウリキだけはトーヤの威圧下でもまるで効いていないのか、普通に動けている。
「ああ、そうだ。お前をぶっ殺しにきた」
威圧の中でケロッとしているゴウリキに対して、トーヤは特に驚くことなく、冷めた目と声色で淡々とゴウリキに言葉を掛ける。
「俺を殺しに⋯⋯だと? やれると思ってんのか? このゴウリキ様を? たかだかエビルドラゴンを倒した程度の実力で俺を殺す? ワッハッハッハ⋯⋯⋯⋯⋯⋯やってみろ、オラァーーーーーっ!!!!!!!!!!!」
ゴウリキが素早い動きでトーヤに接近し手刀を繰り出す⋯⋯⋯⋯が、
ガシッ!
「な⋯⋯っ?!」
トーヤはゴウリキの太い腕と拳で作り上げた手刀を片手でいとも簡単に掴まえた。そして、
ぐしゃっ!
「⋯⋯っ!? ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!」
トーヤは片手でそのゴウリキの右手を握りつぶした。
右手を潰されたゴウリキが床をのたうち回る。
「あ、あのゴウリキの手刀を⋯⋯片手で止めるどころか⋯⋯⋯⋯握り潰すなんて⋯⋯っ!」
「お、お兄ちゃんてこんなに強かったの?」
ラウとレナがトーヤの圧倒的な強さに唖然としている。
「き、ききききききき、貴様ぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜⋯⋯ふざけたことしやが⋯⋯」
バキッ!
「ぐはっ!?」
トーヤはゴウリキの話の途中で拳を繰り出した。
「なんでもいいけどお前しゃべり過ぎ。油断し過ぎだろ?」
「こ、このや⋯⋯っ?!」
トーヤはまたもゴウリキの言葉を無視して一瞬で間合いを詰めるとゴウリキの胸倉を掴む。そして、
グググ⋯⋯。
「っ?! こ、この⋯⋯っ! は、はな⋯⋯せ⋯⋯っ!?」
グググ⋯⋯。
身長差のあるゴウリキの胸倉を掴んだトーヤは力で無理矢理しゃがませる。ゴウリキも力いっぱい抵抗するがトーヤはビクともしない。
「な⋯⋯なんて⋯⋯バカ力だっ!? 離せ、離せーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
もはや、ゴウリキに余裕は無く、必死にトーヤから逃れようとしていた。ゴウリキは空いている左手や足でトーヤを殴ったり蹴ったりしている⋯⋯⋯⋯がトーヤはまったく効いていないのかそれでもビクともしなかった。
そうして、自分の手元にゴウリキを引き寄せると、
バキっ! バキっ! バキっ! バキっ! バキっ! バキっ! バキっ! バキっ! バキっ! バキっ! バキっ! バキっ! バキっ! バキっ! バキっ! バキっ!
無表情で、ただひたすらに、ゴウリキの顔面に何発も何発も拳を入れていった。
2メートル近い大男が胸倉を掴まれ、強引に膝立ちさせられ何発も殴られている。
そんな、あまりにも信じられない光景に周囲の者たちは皆、言葉を失ったまま、ただその一方的な暴力を見せつけられていた。
「な、なんて⋯⋯こと⋯⋯だ⋯⋯。あのゴウリキ様を⋯⋯まるで子供扱いに⋯⋯。トーヤ・リンデンバーグ、そこまでの強さとは⋯⋯」
タオはトーヤのケタ違いの強さに絶望の色を浮かべ肩を落とす。
ドサ⋯⋯。
トーヤはもう何発かわからないくらいにゴウリキを殴った後、手を離した。ゴウリキは虫の息でその場で崩れながら倒れる。
「⋯⋯ふぅ。ま、こんなもんかな」
そう言って、トーヤが威圧を解き、いつものモードに戻る。
「トーヤ!」
「お兄ちゃん!」
「おー、お前たち、ケガはない⋯⋯おわっ?!」
ドサ!
「お兄ちゃん! お兄ちゃん! お兄ちゃん! お兄ちゃん! お兄ちゃん! お兄ちゃん!」
レナがトーヤに勢いよく抱きつく。
「トーヤ、ありがとう。ホント⋯⋯⋯⋯規格外過ぎだよ、お前」
ゴウリキの圧倒的な強さにさっきまで絶望していた二人が、そんなゴウリキをあっさり超えて圧倒したトーヤの強さにレナは興奮と安堵で感情が爆発し、ラウはいつもの飄々とした感じではあったが、よく見ると少し興奮しているようで鼻息がいつもより荒れていた。
「お兄ちゃん! 助けてくれてありがとう! わたし⋯⋯わたし⋯⋯」
「⋯⋯俺のほうこそすまん。ずっと黙ってて⋯⋯」
「ううん。本当はお兄ちゃんが病気が治ってから別人になっていること⋯⋯⋯⋯何となくわかってたんだ、私」
「そう⋯⋯なのか?」
「うん。でも、聞くのが怖くて⋯⋯。お兄ちゃんが本当はいないってこと⋯⋯その事実を知るのが怖くて⋯⋯だから⋯⋯聞けなかった」
「⋯⋯ごめん」
「⋯⋯」
ラウが二人を見てソッとトーヤから離れる。
レナはトーヤの肩に顔を置いて耳元で話を続ける。
「⋯⋯でもね、新しいお兄ちゃん⋯⋯当夜がトーヤとなっても⋯⋯ずっと⋯⋯ずっと⋯⋯私にいつも優しくしてくれて、大切にしてくれて、本当のお兄ちゃんと変わらないくらい、私のことを大事にしてくれたこと⋯⋯私は知ってる」
「⋯⋯レナ」
「昨日は認めたくない事実を突きつけられて、私⋯⋯どうしたらいいか、あの時、すぐには受け止められなくて⋯⋯だから、あの場から逃げたの⋯⋯」
レナが泣きながら、震える声で謝る。
「ごめんな。辛い思いさせてしまって」
「ううん。でも、今はちゃんと整理したから。お兄ちゃんは今でも私の⋯⋯⋯⋯大好きなお兄ちゃんだから!」
「っ!?」
そう言って、レナがトーヤの頬にキスをした。
「レ、レナ!? お、おおお、お前⋯⋯」
「今回はこれで許して⋯⋯あ・げ・る。さ、帰ろう、お兄ちゃん!」
「⋯⋯まったく」
そう言って、トーヤとレナが立ち上がり帰ろうとした⋯⋯⋯⋯その時だった。
「っ!? レナっ!!!!!!!!!!」
「キャっ!?」
「おっ⋯⋯と! お、おい、トーヤ! お前、レナちゃんをなんで突き飛ばして⋯⋯」
「俺からできるだけ離れろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!!!!!」
「何っ?!」
トーヤがそう叫んだ瞬間——窓から何者かがスーッと入ってきた。
「どうも、初めまして。トーヤ・リンデンバーグ君⋯⋯」
「っ?! な、何者だ、お前?」
トーヤの表情からさっきまでの余裕が一切消え、冷や汗を垂らしながら真っ青な顔をしていた。
「ト、トーヤ? 大丈夫か?」
「お、お兄ちゃん、どうしたの?」
そんなトーヤとは対照的にレナとラウは窓から入ってきた『男』に対し、特に何も脅威は感じていなかった。それだけにトーヤが何でそこまで怯えと焦りの表情を浮かべているのかわからなかった。
そのトーヤの前には⋯⋯⋯⋯ピエロの仮面をつけた『黒フードの男』が立っていた。
「私の名は
「⋯⋯
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