異世界セルフプロデュース 〜せっかくチートで異世界に転生したのでセルフプロデュースしてみた〜

第43話043「今後のこと。そして⋯⋯事件発生」

「トーヤ、ちょっといいか⋯⋯」

「⋯⋯アリス」

　俺が泣き止み落ち着きを取り戻したタイミングでアリスが話しかけてきた。

「これからどうするんだ？」

「⋯⋯そうだな。俺もいろいろ考えてみたが⋯⋯⋯⋯決断した」

「決断？」

「これからは自分の『力』を利用して思いっきり目立っていこうと思う」

「何っ？！」

「自分のスキルを隠すのはやめて最大限に利用するつもりだ」

「い、いいのか？　そうなるとトーヤは標的にされるぞ？」

「いい。どうせ俺には隠すものは何もないしな。それに⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯理想はあきらめたし（ボソ）」

「え？　最後なんて⋯⋯？」

「いや、気にしないで結構」

　ああ⋯⋯『恋愛映画の主人公よ、さようなら』

　ようこそ⋯⋯『バトルモード異世界ライフ（泣）』

「ど、どういうことだ？　な、なんの話だ、トーヤ？」

「ひょ、標的って⋯⋯な、なに⋯⋯？」

「オーウェン、ミーシャ⋯⋯突然アリスが接触してきたことに二人は少なからず疑問を持っていたよな？」

「あ、ああ」

「え⋯⋯あ⋯⋯あの⋯⋯う、うん⋯⋯」

「⋯⋯アリスと一緒にいる本当の理由は⋯⋯⋯⋯俺がアリスを護衛するためだ」

「な⋯⋯なにっ？！」

「ご、護衛っ？！」

「私が⋯⋯話そう」

　そう言うと、アリスがオーウェンとミーシャにアリスの命が狙われていること、そして王国内の陰謀についてなどすべてを話した。

「え⋯⋯？　え？　え？」

「そ、そんなっ？！　し、信じ⋯⋯られ⋯⋯ない。実の兄⋯⋯第一王子のライオット様が⋯⋯アリス様の命を狙っているなんて⋯⋯」

　ミーシャは呆気に取られているが、オーウェンはアリスの話にかなりショックを受けていた。

　そんな二人の反応を気にせず、さらにアリスが話を続ける。

「本当だ。この事を知っているのはここにいる者だけだ。そして、味方はこれまで⋯⋯ここにいる爺とヴィアン以外にはいなかった。だが、そんな時、トーヤの噂を聞いて私はトーヤに協力をお願いした」

「「⋯⋯っ？！」」

　二人はアリスの話をジッと聞く。

「⋯⋯しかし、結果的にトーヤ以外の君たちを巻き込む形になってしまった。本当に⋯⋯本当に⋯⋯すまない」

　そういうと、アリスが深く⋯⋯深く⋯⋯二人に頭を下げた。

「⋯⋯ア、アリス様っ！？」

「や、やめてください⋯⋯アリス様っ！？」

　しばらく沈黙が流れた後、オーウェンが口を開いた。

「わかりました、アリス様。ちなみにこれは⋯⋯私の父や兄も知らない話なのでしょうか？」

「ああ、おそらく⋯⋯。ただ、君の父上と私の父は古くから親交がある⋯⋯もしかすると何かを知っているかもしれん」

「⋯⋯では私はマクスウェル家にこの事は口外しないという⋯⋯そのつもりで動いた方がいいということですね？」

「そうだ。すまないが⋯⋯」

「わかりました」

「ミーシャ君⋯⋯」

「は、はいーーーーっ！！！！！！！」

　アリスに急に声をかけられるという不意打ちを食らって焦るミーシャ。

「君は平民だ。なので、奴らは君を狙う可能性は高いと私は考えている。だから⋯⋯君にはしばらく爺に護衛をさせる」

「えっ！？　ウルシャさん？」

「よろしくお願いします、ミーシャ様。全力でお守りいたします」

「ええっ？！　そ、そんな⋯⋯私、平民ですし⋯⋯そこまでされなくても⋯⋯」

「いや、逆だ、ミーシャ君。⋯⋯失礼だがこの中で君が一番彼らに狙われたとき対抗するのが難しいと判断した。屈辱的かもしれんがどうか爺の護衛を受け入れて欲しい⋯⋯この通りだっ！」

「っ？！　ア、アリス様っ！！！！！」

　アリスが平民であるミーシャに対して二度も頭を下げた。

　王族の⋯⋯しかも国王の娘が平民に二度も頭を下げる⋯⋯⋯⋯それは常識的には絶対にあり得ないことだ。

　その為、ヴィアンも思わずアリスの行動に声を上げた。

「そ、そんなっ？！　ア、アリス様！⋯⋯私のような平民に頭をお下げになるのはやめてくださいっ！！！」

　ミーシャが必死にアリスにやめるよう懇願する。

「⋯⋯では、爺が護衛することを受け入れてもらえるか？」

「は、はいぃぃぃぃ〜〜〜！！！　ウルシャさんに護衛されますぅぅ〜〜〜〜！！！！！！」

「ありがとう、ミーシャ君っ！」

　う〜む。

　俺にもそうだったが、アリスのこの『下からのゴリ押し感』はある意味、凄まじいな。

　無意識でそうしているのだろうが、いずれにしてもお姫様がそんな『武器』を持っていてそれを行使されたら断れる奴いる？　

　俺はアリスの凄さをまた一つ実感した。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

　その後、アリスから「今後は身辺を気をつけてくれ」と言われた後、話が終わり俺たちは自分の寮へと帰っていった。

　しかし、次の日の朝——事件は起きた。

「ア、アリス様⋯⋯っ！」

　朝、ミーシャが教室に入ってくるや否や慌てた様子でアリスに声をかけた。

「どうした、ミーシャ君。朝からそんなに慌てて⋯⋯」

「レナちゃんが⋯⋯レナちゃんがいないんですっ！！！！！」

「なに⋯⋯っ？！」