第41話041「告白/その2」



「まず、最初に言っておくことがある。俺は⋯⋯⋯⋯トーヤ・リンデンバーグではない」

「「「「「っ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」


 俺の言葉にそこにいた皆が言葉を失った。


 まー無理もない。


 俺は皆のリアクションに特には触れずに話を始めた。


「俺はこの世界とは別の異世界からやってきた⋯⋯というより転生してきた。このトーヤ・リンデンバーグという体に⋯⋯」

「っ!? ど、どういう⋯⋯こと? お、お兄ちゃんは⋯⋯別人ってこと?」


 レナがあまりの衝撃に顔を青くしながら問いかけてきた。


「そうだ。本当のトーヤ・リンデンバーグは⋯⋯あの『瘴気病ミアスマ』で亡くなった」

「っ?!」

「そして俺はそのタイミングで⋯⋯トーヤ・リンデンバーグの体に転生した」

「て⋯⋯転生⋯⋯」

「そ、そんな、ことが⋯⋯」

「俺の前世は『地球』という星で、そこで『烏丸当夜』という名前で生きていた。当時の年齢は23歳。そして、その前世の記憶を持ったまま、俺はこの世界の⋯⋯トーヤ・リンデンバーグに転生した!」

「ち、地球⋯⋯?」

「カ、カラスマ⋯⋯トウヤ?」

「に、23⋯⋯?」


 もうすでに、ここまでで皆は動揺を隠しきれないでいた⋯⋯一人を除いては。


「なるほど。前世の記憶を持ったままか⋯⋯道理で実年齢よりも大人びているわけか」


 アリスだけは俺の言葉に驚くだけでなく、むしろ納得するような感想を述べた。


「俺は⋯⋯前世で不慮の事故にあって、それで死んだ後『神様』みたいな奴にあった。そして、その神様から『ある能力』を受け取ったんだ」

「え? か、神⋯⋯様⋯⋯?」

「え? え? か、神様から⋯⋯能力を⋯⋯受け取った?」


 アリス以外の皆が俺の話にどこまでついていってるのか、信じているのかわからなかったが、俺は気にせずどんどん話を進める。


「その能力の名は『自己改変セルフ・プロデュース』。その能力は『自分のステータスを自由に操れる』というものだ」

「なっ?! ス、ステータスを⋯⋯自由に⋯⋯操れるっ?!」

「そ、そんな能力⋯⋯聞いたこと⋯⋯」


 すると、そこでミーシャが大きな声を上げる。


「ト、トーヤ! そ、それじゃあ、もしかして⋯⋯エビルドラゴンを倒したのも⋯⋯やっぱりトーヤの⋯⋯能力で⋯⋯」

「⋯⋯そうか。やっぱり見てたんだな、ミーシャ?」

「う、うん。実は⋯⋯」


 そういうと、ミーシャが俺がエビルドラゴンを倒したのを間近で見ていたことを話した。


「で、でも、あまりにも⋯⋯信じられない光景だったから⋯⋯私⋯⋯怖くて⋯⋯」

「うん⋯⋯そうだよな。だって、それまではFランカーで、しかもFランカーの中でも底辺に近い魔力しかなかったからね。それに⋯⋯俺が以前のトーヤ・リンデンバーグと違うことも余計に怖がらせたんだろ?」

「っ!? う、うん⋯⋯」


 やっぱりそうか。そうだよな。


 そりゃ、長い付き合いだし気づくよな。


「お、お兄ちゃん⋯⋯」

「⋯⋯レナ」


 次に、レナが下を向きながら小声で声を話しかけてきた。


「お兄ちゃんは⋯⋯昔のお兄ちゃんじゃ⋯⋯ないって本当⋯⋯なの?」

「ああ⋯⋯本当だ」

「お兄ちゃんは⋯⋯ここにいるお兄ちゃんの中にいるのは⋯⋯カラスマトウヤというこの世界の人じゃないってこと?」

「ああ、そうだ」

「じゃあ⋯⋯じゃあ⋯⋯お兄ちゃんは⋯⋯もうこの世にはいないってこと?」

「⋯⋯ああ」

「ふざけるなーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!!!」


 ドン!


「レナ!!!」

「レナちゃん!!!」


 レナが魔力を一気に解放した。


 部屋がビリビリとそのレナの魔力解放に揺れる。


「そ、それじゃあ⋯⋯それじゃあ、ああああ、あんたは⋯⋯あんたは今まで⋯⋯私たちを⋯⋯おおおお、お兄ちゃんと偽って⋯⋯だだだだだ、騙していたって⋯⋯⋯⋯ことじゃないっ!!!!!!!!!」


 バキッ!!!!


 そう言ってレナが一瞬で俺に接近し殴りかかった。


 俺は避けずにそのままレナの拳を受け止める。


「レ、レナ⋯⋯やめろっ!?」

「レナちゃん! 落ち着いて!!」


 オーウェンとミーシャが必死にレナを止めようとしたが、


「いい! 止めなくて!」


 俺は二人がレナを止めるのを拒否した。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」


 レナは怒りのまま全身全霊で俺に拳を何発も打ち込んでくる。


 俺はその拳をそのまま、無防備の状態でただただ⋯⋯受け続けた。


「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ⋯⋯」


 しばらくすると、殴り続けたレナの拳が止まった。


「はあ、はあ、はあ⋯⋯何なのよ、何でそこまで私が全力で殴って⋯⋯Eランカーのあんたは⋯⋯無傷なのよ⋯⋯はあ、はあ」

「⋯⋯レナ」


 俺は無傷だった。


 当然、レナの拳を受ける前にステータスを『Sランク』までゴリゴリに引き上げて対応していたからだ。


「ふざ⋯⋯けん⋯⋯な。はあ、はあ⋯⋯ほ、本当に申し訳ないと思うなら⋯⋯はあ、はあ⋯⋯わ、私に殺されなさいよ⋯⋯はあ、はあ」

「⋯⋯レナ」


 レナは俺を怒りの形相で見つめながら話を続ける。


「あ、あんたは⋯⋯お兄ちゃんとして私たちを騙して⋯⋯お父さんやお母さんも騙して⋯⋯はあ、はあ⋯⋯今みたいな状況じゃなければこの先もずっと⋯⋯はあ、はあ⋯⋯私たちを騙し続けようとしてたんでしょ⋯⋯はあ、はあ」

「⋯⋯レナ」

「⋯⋯レナちゃん」


 レナの言葉にミーシャとオーウェンが苦い顔をする。


「わ、わたしは⋯⋯はあ、はあ⋯⋯あんたを絶対に許さないっ! お兄ちゃんのフリして⋯⋯はあ、はあ⋯⋯みんなを騙したこと⋯⋯私は絶対に⋯⋯⋯⋯許さないっ!!!!!!!」


 バン!


「レナっ!!!!」

「レナちゃん!!!」


 すぐに後を追おうとしたミーシャとオーウェンだったが、


「こないでっ!!!!!!!!!」

「「っ?!」」


 レナは二人を拒絶して、一人⋯⋯部屋を出ていった。

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