第40話040「告白/その1」
「レナ様、ミーシャ様、オーウェン様⋯⋯」
「「「っ!? ウ、ウルシャさん!!」」」
王都にあるカフェで話を済ませた三人が学校に戻ってくると、ちょうどアリスの執事であるウルシャが出迎えてくれた。ちなみに三人ともウルシャとは顔見知りである。
「どうしたんですか?」
オーウェンがウルシャに問いかける。
「実はこれから皆さんをアリス様のお部屋へご招待したいのですが⋯⋯」
「え、えええええええ!!! ア、アリス様の部屋に⋯⋯ですかっ!?」
レナがいち早く反応する。
「そ、そそそ、そんな、恐れ多い⋯⋯ですぅ⋯⋯」
続いてミーシャが怯えた震え声を上げた。
「り、理由を聞いても⋯⋯?」
オーウェンが一人冷静にウルシャに尋ねる。
「今、アリスお嬢様のお部屋にはトーヤ様もいらっしゃいます」
「トーヤも?」
「はい。そして⋯⋯トーヤ様から『重大なお話』があるということで三人をお連れするよう言われまして、こうして迎えに来た次第であります」
「「「重大な⋯⋯話⋯⋯?」」」
三人は顔を合わせると何かを察する表情を見せた。
「⋯⋯わかりました。案内をお願いします」
*********************
「⋯⋯みんな」
「「「トーヤ(お兄ちゃん)!」」」
扉の開く音がしてそこに目を向けるとレナ、ミーシャ、オーウェンの三人が部屋に入ってきた。
「急にすまないな、三人とも」
「「「アリス様」」」
そう言って、アリスが机に三人を手招きする。そして、そのタイミングを見計らってウルシャさんがスッと三人に紅茶を差し出す。
「さて、突然呼び出してすまなかった、三人とも。実は君たちに話があって部屋にきてもらったんだ」
「話⋯⋯ですか?」
「ああ。では⋯⋯トーヤ」
「⋯⋯ああ」
アリスに促された俺は三人の前に立った。
「お兄⋯⋯ちゃん」
「トーヤ⋯⋯君」
「⋯⋯トーヤ」
アリスも三人の後ろで腕を組みながら俺が話し始めるのを待ち構えていた。ちなみに、ここまできて言うのも何だが俺はかなり緊張していた。
なんせ、これから⋯⋯『異世界転生の話』をするのだから。
*********************
「えーと⋯⋯まずどこから話したらいいだろう⋯⋯」
俺は『いざ話す』となって改めて『あれ? どこから話せばいいんだ?』と少しパニクった。すると、
「⋯⋯ちょっといいかな?」
「オーウェン! あ、ああ⋯⋯」
オーウェンが挙手をしたので俺はすぐに発言を了承する。
「実は⋯⋯今まで黙っていたんだが⋯⋯俺たち三人は⋯⋯トーヤに聞きたいことがある」
「っ!?」
オーウェンが厳しい表情で訴える。
「それは⋯⋯村を襲ったエビルドラゴンのことについてもそうだが、それ以上に俺たちは⋯⋯⋯⋯トーヤ、お前自身について話を聞きたい!」
「⋯⋯オーウェン」
「トーヤ⋯⋯もしかして、これから話そうとしていることはそういう話なのか?」
「⋯⋯そうだ」
「っ!!」
今度は、俺がオーウェンに厳しい表情で訴える。
「全部話す」
「⋯⋯わかった」
やはり、オーウェンたちがこれまで俺自身について思うところがあったのだと今のオーウェンの返事で確信した。
そうだよな。
そりゃ親友だもんな⋯⋯トーヤ・リンデンバーグは。
俺のことやトーヤ・リンデンバーグのこと⋯⋯つまり『異世界転生のこと』を話さないと、結果的に巻き込まれてしまった『政治的陰謀』から三人を守ることはできない。
それに、俺もこれ以上三人に自分のことを隠しながらアリスに協力するのは無理だ。
例え、三人に愛想尽かされたり、嘘つき呼ばわりされても⋯⋯それでも三人にキチンと『真実』を話すことは俺の義務だ。
スー、ハー。
俺は覚悟を決めるべく、一度、顔を上げ大きく深呼吸をする。そして、
「まず、最初に言っておくことがある。俺は⋯⋯⋯⋯トーヤ・リンデンバーグではない」
「「「「「っ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」
神妙な面持ちを三人に向けた俺はゆっくりと話し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます