第27話027「黄金世代」
——入学式
「新入生諸君。ガルデニア神聖国立高等学校へようこそ」
体育館の始まった入学式は校長の挨拶から始まった。
「此処、ガルデニア神聖国立高等学校は次代のガルデニアを支える者達を育成する教育機関であり、同時にガルデニア発展の為、身分に関係なく切磋琢磨し成長する場でもある。よって、ここでは身分に関係なく交友を結び且つ、生徒はどのような身分であろうと教師の権利を脅かすことはできない⋯⋯」
校長の話ではこの高等学校⋯⋯高校では身分に関係なく平等に振る舞う方針らしい。
てっきり、王都にある教育機関ならガチガチの縦社会と思っていたので俺は少し驚いた。
まあ、話では現国王の『ジョファ・グレイス・ガルデニア』が掲げる『平民の身分向上』という政策の元に運営している為らしいが。
もし、それが本当ならけっこう近代的な考え方を持つ国なのかもしれない。
「——続きまして、新入生首席挨拶⋯⋯オーウェン・マクスウェル」
「はい」
なんと、新入生の首席挨拶はオーウェンだった。
「新入生のオーウェン・マクスウェルです。高等学校でこれから学ぶ私たちもまた、ガルデニア発展を支えていく一生徒として身分に関係なく切磋琢磨し、卒業された先輩方に劣らぬよう精進していけるよう⋯⋯」
オーウェンが挨拶を始めると、声量は落としているものの周囲からは朝と同じ黄色い声が聞こえる。
オーウェン君とは今後とももっと仲良くしていこうと心に誓ったのは言うまでもない。
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入学式が終わると俺たちは教室へと向かった。
さて、ここで軽く説明したいと思う。
このガルデニア神聖国立高等学校の生徒数は極端に少ない。
どのくらい少ないかというと、教室が1クラスしかないほどだ。
ちなみに生徒の数は俺たち新入生で30人ほど。二年生、三年生でもほとんど変わらないから全学年入れても生徒数は100名前後だ。
理由は、このガルデニア神聖国の王都にいる貴族の数が少ない為である。
そもそも貴族が少ない理由というのが、広大なガルデニア神聖国の中でも『魔力量の高い貴族』だけが王都内に住むことを許されるという『特権』的な面があるかららしい。
ただ、そういう現状がある為、王都では他の領地や国に比べて『人材不足』が深刻だった。
そこで、現国王が『王都にいる優秀な人材をもっと増やす必要がある』ということで『平民でも王都の貴族と同等の力ある者は貴族へと身分昇格を許す』というかなり思い切った政策に舵を切った。
とはいえ、王都に住むことを許される貴族の『魔力量の質』は落とせない為、平民レベルでそこまで卓越した魔力量を持った者が出てきていないのが現状である。
さらに、ジョファ国王は『平民の身分が諸外国に比べて低いのは嘆かわしい』ということで『平民の身分向上』という政策も同時に始めており、それが現在の高校の教育方針へと繋がっている。
ただ、初めて間もない政策ということと、貴族の結構な反発があるということで、村にいた時にアリアナ先生から『高校生活は王族や貴族とのトラブルはできるだけ避けるように』と強く言われた。
全くもって同意である。
そんな『トラブルメーカー』になる気など
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——教室
「初めまして、新入生諸君! 私がこの一年生クラスを担当することになったルイス・ヴェルモンテだ。よろしく!」
事前にオーウェンから聞いていたが、この一年生クラスの担任である『ルイス・ヴェルモンテ』という人物は、魔術に特化した部隊である術士団で代々活躍してきた有名な家の一つであるヴェルモンテ家の者らしく、本人も『大陸間戦争』で活躍した有名人らしい。
実際、生徒も少しザワザワとその通りの反応を示している。
まあ、それくらいの人物じゃないとここで教師として生徒に教えることはできないだろうな。
特に、今年の新入生は。
「さて⋯⋯君たちもいろいろと周囲から言われて知ってると思うが、今年の一年生は四高家のご子息や王族のご子息がいる世代で『
そう、今年の一年生は朝出会ったラウ・リーチェンのような高位貴族である『四高家』が同級生にいる。
しかも、四高家すべての子供が同級生であり、そして、その全員が嫡男という⋯⋯何とも役者が揃い過ぎの世代である。
さらに極め付けは、現国王の娘である『第二王女』も同級生という『数え役満』状態。
何と言うか⋯⋯『
「校長先生も仰ってたが⋯⋯
ルイス先生が校長が入学式で言っていたことを繰り返し伝えるが、周囲の反応は「ハン!」てな感じだ。わかりやすくいえば『鼻で笑っている』感じ。
今年の一年生で平民から推薦枠で入ってきた生徒は俺とレナ、ミーシャ以外に三人ほどいる。
まだ、話してはいないが見た感じだと一人の女子は『周囲の貴族に圧倒されキョドっている感じ』で、もう一人の女子は『我関せず』、そして最後の男子は『舐められてたまるか!』と周囲を警戒している感じだ。
まあ、それもそのはず⋯⋯周囲の貴族たちは俺たち平民出身に対しニヤニヤと笑いながら視線を向けているからだ。まるで『カモが来たか』と言っているかのように。
「さて⋯⋯俺はどうしようかね」
おそらく、お昼あたりになれば貴族の連中が俺たち平民に絡んでくるであろうことはすでに予想済みである。映画や漫画、アニメでよく見かける定番イベントというものだ。
この場合、下手に反抗的な態度を取れば周囲の注目の的となる。
つまり、良くも悪くも目立ってしまうのだ。
しかし、舐められ過ぎもマズい。
ということで、立場が圧倒的上な相手にどう立ち回ればいいかということを俺が示そうと思う。
フッフッフッフッフ⋯⋯⋯⋯次回を待て!
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