第26話026「高位貴族(四高家)」
「うらやまけしからーーーーーーーーーーんっ!!!!!!!!!!!!!」
俺はオーウェンのハーレム環境に思わず『うらやまけしからん』を叫んだ。
「な、な〜に⋯⋯あの男? 何か奇声を発したんだけど⋯⋯」
「ていうか、オーウェン様の周りの人たちはどこの貴族かしら?」
「さあ? でも、格好を見た感じ貴族⋯⋯というよりも⋯⋯」
「も、もしかして⋯⋯平民っ?!」
さっきまでの黄色い声援が一変しザワザワし始める。
なぜだろう?
けっして俺のせいではないはずだ。
「お兄ちゃんが騒ぐから⋯⋯(ハァ)」
「トーヤが叫ぶから⋯⋯(ハァ)」
「トーヤ君、大声出すから⋯⋯(ハァ)」
なるほど。
やっぱり原因は俺ですか、そうですか。
「オーウェン、久しぶり!」
「ラウ!」
「「「「「っ?!!!!!!!!!!!!!!」」」」」
オーウェンに声をかけた『ラウ』という男が現れるや否や、突然空気がピリッとなった。
あれだけ騒いでいた女子生徒たちがピタリと静まり返る。
「な、なんだ⋯⋯?!」
「な、なに⋯⋯?」
「ひえ〜⋯⋯」
俺たちは突然の『空気の変化』に何事かとなる。すると、
「ちょっと〜、ちょっと〜⋯⋯皆、やめてよ〜、そういう空気作るの。僕たち同級生でしょ? それに
そう言って、『ラウ』という男がさっき騒いでいた女子生徒たちに声をかけてく。
「は、はいっ!」
「こ、光栄です! ラウ様!」
「あ、あああ、ありがとうございます!」
声をかけられた女子生徒は緊張した面持ちで声を震わせながら男に返事をする。
オーウェンよりももっと緊張しながら接する感じだったので、恐らく家柄もマクスウェル家よりも
何者だ?
「やあ、初めまして⋯⋯トーヤ・リンデンバーグ君」
「あれ? 何で俺の名前を?」
すると『ラウ』という謎の男が俺に名指ししながら握手を求めてきた。
とりあえずオーウェンの友達だろうということで普通に握手をした。すると、
ザワ⋯⋯、
ザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワ⋯⋯っ!!!!!!!!!!!!!!
さっきまで静まり返った周囲の生徒が一斉にザワつきだした。
「お、おい! ラウ・リーチェン様から握手を求めたぞ!」
「あ、あああ、あの男、何者だ!!!!!!!」
「な、何?! 何なの! あの見た目平民男⋯⋯いったい何者なの!」
いや「何者?」て⋯⋯そりゃ、こっちのセリフだっつーの!
「⋯⋯はぁ、ラウ。お前こうなるとわかっててワザとトーヤに声をかけたな?」
「さーて、何のことやら?」
オーウェンが冷めた目でラウという男にツッコむが、彼はどこ吹く風と受け流す。
「オーウェン⋯⋯こいつ誰?」
「あ、ああ。えーとね、トーヤ⋯⋯彼は⋯⋯」
オーウェンが説明しようとする横からまた『ラウ』という男が入ってきた。
「僕の名はラウ・リーチェン。リーチェン高家の次期当主予定です。どうぞ、よろしく!」
「リーチェン高家?」
「「リ、リーチェン高家ーーーーーーーーっ!!!!!!!!」」
俺はよくわからなかったが、レナとミーシャが目を丸くして叫んだ。
「何? リーチェン高家って?」
「え?! 知らないの、お兄ちゃん? リーチェン高家ってガルデニア神聖国の高位貴族⋯⋯『四高家』のひとつの⋯⋯あのリーチェン高家だよっ!!!!!」
「高位貴族⋯⋯四高家⋯⋯」
すると、トーヤの記憶から答えが出てきた。
「し、四高家っ!? しかもリーチェン高家て⋯⋯⋯⋯マジ?」
「ハハハ、いや〜そうなんだよ〜」
俺は皆とはだいぶ遅れた時間差で驚く。
オーウェンの友達っていうから、てっきり貴族だと思ってたけど⋯⋯まあ貴族でも俺たち平民より身分は上だが⋯⋯それにしても、まさかここで『高位貴族』⋯⋯『四高家』が現れるなんて誰が予想できるよ!
——高位貴族
ガルデニア神聖国の身分制度は『王族』を頂点とし、そこから『高位貴族』『貴族』『平民』と別れている。
その王族のすぐ下の身分である『高位貴族』というのは、現在『四つの貴族』だけが存在している為『高位貴族』というよりも『四高家』と呼ぶのが定着している。
そして、リーチェン高家はその四高家の中でも『一番影響力のある高家』と言われている。
「ど、どうして、そんな人が⋯⋯」
「いや〜、オーウェンから話を聞いて興味持ったんだよね⋯⋯サイハテ村を襲った魔獣襲撃事件の後、急激に魔力量が増加した君にね」
「え?」
そう言って、ラウ・リーチェンが不敵に笑った。
「高校生活——楽しみにしてるよ、トーヤ・リンデンバーグ君。じゃーね!」
「な⋯⋯っ!?」
そう言って、ラウ・リーチェンは体育館へと駆け足で去っていった。
「「⋯⋯」」
この時、オーウェンとミーシャがトーヤを見つめていたがトーヤは気づいていなかった。
*********************
「な、何者だ、あいつ⋯⋯っ?!」
ラウ・リーチェンがトーヤに声をかけ握手を求めると周囲の者たちはそんなラウ・リーチェンの行動に注目したが、少し離れたところで見ていた一人の女子生徒はラウ・リーチェンではなくトーヤを見ていた。
そして、そのトーヤを見た途端、あまりのショックに言葉を失う。
「な、なんだ、あの男の
しかし、そんな彼女もまた世界で一人しか持たないとされる『ユニークレアスキル』の所持者なので大概である。
そんな彼女の
「こ、こんな『神の如き
スーッ。
彼女は一度目を閉じ大きく息を吸った。
「絶対にあの男を私の
彼女の美しさを讃える代名詞の一つ『金色の瞳』がギラリと力強く光る。
「フフフ⋯⋯高校生活、楽しくなりそうだな、爺」
「はい。アリスお嬢様」
——アリス・グレイス・ガルデニア
ガルデニア神聖国王位継承権第二位。
そんな肩書きを持つ彼女もまたトーヤに狙いを定めた。
トーヤの楽しい高校生活が始まる。
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