第7話007「魔術の授業(トーヤの場合)」
「はーい、それでは生活魔術の練習を始めます。今日は身体強化の魔術の練習でーす」
「「「「「はーーーーい!」」」」」
ここサイハテ村の小学校でも魔術を教える。というのも平民は魔力が少ない為、主に習うのは生活魔術というものである。
生活魔術には『火を起こす』『光をつける』といった生活でよく使われる魔術と、仕事をする上で役に立つ『身体強化』という魔術を習う。『身体強化』は重い物を持ったり運んだりするときに使うので、小学校を卒業してすぐに大人に混じって仕事をする平民の子供たちにとってはとても大事な授業である。
しかし、火をつけたり、光をつける魔術は一瞬で使用することが多いので大した魔力は必要ないが『身体強化』は長時間使用するため魔力量が少しでも多いほうがよい。ただし、それは個人差があるので魔力量が少ない子供は力仕事以外の仕事をするしかなくなる。つまり仕事の選択肢が減るということである。
その為、この『身体強化』の授業は皆、真剣である。
「よし! では、レナ、ミーシャ、オーウェンたちは奥の訓練場で魔術訓練だ!」
「「「はい!」」」
この村には平民しかいないが、その中でもごく稀に『魔力量の高い子供』がいる。その場合、その子供たちに限っては皆とは別に魔術の授業を行う。この授業は生活魔術ではなく『高等学校』で教えられる魔術⋯⋯つまり、将来騎士団や術士団に加入するための攻撃魔術や防御魔術、治癒魔術などの基礎を習う。将来『高等学校へ推薦が決まっている子供たち』として扱われる為『魔術の授業』というよりも『魔術訓練』という色合いが強い。
そして、この村には二人の魔力量の高い子供がおり、その二人というのがトーヤの妹のレナと幼なじみのミーシャである。オーウェンは魔力量の豊富な貴族なので言わずもがなである。ちなみにレナは一つ下ということもある為、特別にこの魔術の授業は最上級生と一緒に授業を受けている。
俺? 俺は三人とは別にクラスメートと一緒に『身体強化』の授業を受けている。トーヤは特に人よりも魔力量が少ないのでこの『身体強化』の授業は今後の生活にとってとても重要なのである。
「
俺は集中して「
三ヶ月前——初めて魔術の授業で魔術を自分の手から出したときはメチャメチャ感動した。なんせ、ファンタジー映画のように魔術が実際に出せたわけだからな。ちなみに魔力の出し方、魔術の発現方法はトーヤの記憶にあったのでそこは問題なかった。でも、
「い、一応⋯⋯三ヶ月間⋯⋯一生懸命練習したん⋯⋯だけ⋯⋯ど⋯⋯」
俺は
「も、もう⋯⋯無理⋯⋯っ!」
俺はすぐに魔力切れを起こし地べたに腰を下ろす。
「すごいじゃないか、トーヤ! 前よりも一時間は持てるようになったじゃないか!」
「う、うん⋯⋯」
クラスメートが俺よりも二倍近い石を持ちながら褒めてくれる。誤解がない様に言っておくが彼は別に皮肉を言っているわけではない。素直に俺の努力の成果を褒めているのだ。この村で三ヶ月も生活し、七人しかいないクラスメートともよく話をしている。そのクラスメートの中にそんな『皮肉』を言うような性格がねじ曲がった奴は一人もいない。
「それではまだまだですよ、トーヤ。来年卒業した後は今の倍は最低でも身体強化魔術を維持できるようにならないと仕事の時大変ですから」
「は、はい、先生!」
担任の先生が厳しめな言葉をかける。
しかし、そこには先生の愛情が感じ取れた。俺がこの状態で卒業して仕事を始めれば苦しむことをわかっているからだ。この村は先生も生徒も皆、優しい人しかいない。今では地球にいた頃の周囲の性格のねじ曲がり具合は異常だったんだなと感じる。
俺はそんな先生の言葉に勇気づけられ、もう一度残り少ない魔力を使って練習した。
それにしても最初⋯⋯『神様クソじじい』が『魔術を使うときは注意しろ』だの『魔力量がどうのこうの』言ってたけど⋯⋯俺はてっきり『めっちゃ魔力量があるから注意して使え』っていう風に聞こえたんだけどな〜⋯⋯あれは俺の単なる勘違いだったんだろうか? まあ確かに、魔力をいくら引き出して魔術を発現しようとしてもみんなより劣っているのは明らかなのできっと勘違いだったのだろう。
「なんだよ⋯⋯てっきり魔力がいっぱいあるとか、魔術の才能があるとか、期待しちまったじゃねーか!」
俺はブツブツ文句を言ったが、とはいえ『そんなチート能力もらって何かと戦う人生なんて御免だ!』と啖呵を切った以上自業自得である。
「はあ、とはいえ少しくらいは欲しかったなぁ〜⋯⋯チート能力」
そんなことを思いながらやっていると、俺は完全に魔力が底をつきその場でぶっ倒れた。
——十分後
目を覚ますと先生に『完全な魔力切れは絶対やっちゃダメっ!』とめちゃめちゃ怒られた。
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