第4話004「世界」
——季節は夏
俺は教室の窓際の席で少し湿った風を顔に浴びながら外を眺めていた。
トーヤの記憶によるとこの世界は⋯⋯というよりこの地域は日本と同じような気候で『四季』があるらしく、日本と同じ順序で季節が変わっていく。
ちなみに他の地域⋯⋯例えば北よりの地域は『寒い土地』で、南寄りだと『暖かい土地』なのだそうだ。地球と環境がかなり似ている。もしかすると、この星は宇宙のどこかにある地球と似たような星なのかもしれない⋯⋯そんなことを思いながらボーと外を眺めていると、
パシッ!
「あたっ!」
「トーヤ君。病み上がりかもしれないが授業はちゃんと聞きましょうね?」
教師が笑顔で注意をするが目が笑っていない。こわっ。
「す、すみませんでした⋯⋯」
アハハハハッ!
クラスの皆に笑われた。
ここに転生して以来、これでもかっというくらい幸せな毎日を送っていた。
俺が転生してから早いものであっという間に三ヶ月が経過した。
その間にいろいろなことがわかった。
*********************
——まず『交友関係』
トーヤには特に仲の良い友人が二人いる。
一人は『ミーシャ・ブラバツキー』というあの前に大泣きした栗色のショートカットの幼なじみの女の子だ。それともう一人、男友達がいるらしいのだが実はこの子がなんと『貴族』。しかも家族ぐるみの付き合い。
トーヤの記憶によると俺がイメージしているような貴族とは違うようで、トーヤの彼の印象としては『とても気さくで物腰柔らかいイケメン』とのこと。名前はオーウェン・マクスウェル。
貴族の子供は基本、王都アクロポリスにある『ガルデニア神聖国立第1初等学校」の寮に入って学校に通うのが一般的で実際オーウェンも第1初等学校に在籍している。ただオーウェンはけっこう『変わり者』らしく本人たっての希望で一年の半分はこの王都から最も離れた僻地のサイハテ村にある『ガルデニア神聖国立第11初等学校』に来て授業を受けている。その為、家族は王都に居を構えているがオーウェンがこの村の小学校に通うときはオーウェンの六つ上の兄と一緒にこの村にあるマクスウェル家の別荘に滞在する。別荘⋯⋯さすが金持ちという感じだ。
一年の前半は王都の第1初等学校で授業を受け、秋から冬にかけて第11初等学校に移ってくるのでそろそろこの村にやってくるだろう。会うのが楽しみだ。
——次に『学校』
ガルデニア神聖国では第1から第11まで小学校が存在し、数字は王都から離れるほど増えていく。俺が住んでいるこの『サイハテ村』は11番目となるので王都から最南端に位置する辺境の地だ。
『サイハテ村=最果て村』と覚えやすいし、実際、最果ての村よろしくド田舎である。ちなみに南に位置する場所なので王都のある中央よりは気温が高い土地だ。
学校は6歳から通い11歳で卒業を迎える。なので最上級生は6年生なのでこの辺は日本と同じだがこれ以降がかなり異なる。というのも、この世界で平民は小学校を卒業するとすぐに社会に出ることになる。仕事をするということだ。ちなみに最初はほとんどが『家業』を手伝うか、『弟子入り』という『師弟制度』のような形で社会に出る。
ちなみに平民が高等学校へ進学しない理由は、小学校の次の『高等学校』は主に『軍事教育』の場となるので魔力の少ない平民には高等学校への進学は意味がないからだ。ただ、たまに出てくる『平民でも魔力の高い者』については小学校の校長推薦による『推薦入学』が存在する⋯⋯が、そのような者は『年に一人出るか出ないか』というくらいには稀な話である。
——次に『村』
ここサイハテ村はさらに南へ行くと別の国があるので『国境付近の村』の一つとなる。
ここを領地に持つ貴族は『辺境伯』と呼ばれ、貴族の中でも『格』が他の貴族よりも上に位置する。理由は『国境付近の村』なので他国との政治的な親交や侵入者に対する防衛も兼ねる為、政治的判断で動ける能力と武力が兼ね備った貴族が求められるからだ。
また、侵入者の話でいうと他国の者以外にももうひとつ脅威がある。それが『魔獣』の存在だ。
この世界には動物以外に『魔獣』という生き物が存在する。理由は不明だがこの魔獣は『人型の生き物』に対してのみ攻撃を仕掛けるらしい。なのでこの魔獣の侵入を食い止める必要もあるので『辺境伯』は相当の『力』が求められる。
ていうか、トーヤが11歳にしてここまで知識を持っていたことに俺は驚いた。トーヤは魔術や体術、身体能力は他の人に比べると低かったみたいなので、その分勉強に励んでいたらしい。正直感心した。
ちなみに、この村は人口が二百人程度でさらに辺境の村ということもあり、貴族は『辺境伯』とオーウェンの『マクスウェル家』しかいない。この村の『領主』で『辺境伯』の名は『バスケル・ハイツーク』という。トーヤの記憶では『いかにも貴族』という感じの人物らしく、領民を下に見る言動や態度が非道いらしい。まあ、貴族にしては気さくで優しいオーウェンやマクスウェル家の人間がかなり『稀』なのだろうとトーヤは冷静に分析していた。
「生前のトーヤは本当に賢かったんだな。トーヤの記憶はすごく助かる」
そんな感じで俺はこれまでの三ヶ月をざっと振り返っていたところで、
ゴン!
「あっ⋯⋯痛っ!」
「ろ・う・か・に⋯⋯立ってなさい!」
教師の雷が直撃した。
こうして今日も平和な一日が流れていく。
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