薄い緑茶

 作業のおともは、常温の緑茶と決めている。つい数ヶ月前に麦茶から緑茶に変えた。これが案外合っていたようで、何だかんだと続いている。

 緑茶のティーバッグを一リットルのボトルに入れて、放置。そしてしばらくして飲む。それを飲み干しては、また作り直し、いつか書いた通りに緑茶のカップを洗い損ねる。

 まじまじとティーバッグのパッケージを眺めて、私は気づいてしまった。

 パッケージの写真よりも、どう見ても、緑茶の色が薄い。

 絶対私の作っている緑茶の方がパッケージの写真より透明度が高い。板、どこまでも見えちゃう。摩周湖かな、支笏湖かな。本当に水に緑の色が薄っすらついたようなつかないような色だったのだ。

 これってこういう濃さだろうと思っていたら、そんなことはなかった。それに気づいたとき、「そんなことってある?」と口にしていた。そう、私はある工程をすっかり飛ばしていたのである。

 それは、よくかき混ぜるという工程だ。

 そう気づいたので、振って作ってみた。よく振って、攪拌しろと願いつつ。

 願いが叶ったのか、薄い緑茶は濃い緑茶になった。よかった。湖に命が増えた。かもしれない。


 では、数ヶ月、私は何を飲んでいたのだろう。薄い緑茶? いやこれはもはや、緑茶ではない。緑茶風味の水だ。緑茶風味の水、

 言い訳させてもらうなら、これは断じて振るのが面倒でやっていなかったとかではない。振る必要があると、気づいていなかったのだ。

 さすがに緑茶を振るのを面倒くさがりはしない。


 何にせよ、振ると濃くなると気づけたので、これからの緑茶ライフはきっと濃いものとなるだろう。

 いつも家電の説明書なんかを読まずにいろいろやってしまう方なのだが、今度から説明とつくものは一通り目を通そうと思った。パッケージにも、案外大事なことを書いているんだ。


 ああ、それと、透明度が高ければいいってものでもないんだよな。

 透明度が高いことと、生物多様性があることは、また別の話だし。


 支笏湖って言うゲームあった気がする。しこつこしこつこ。これ、支笏湖って言い続けられたら勝ちなんだったけか。

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