マスク

 マスクが標準装備になって、1年以上が経とうとしている。私はマスクが割と好きだ。

 外界と隔離されている感覚を覚えるから。外界と隔離されている、いや、試験管の中を覗きこむように他人事として外界のことを処理できるから。

 水族館で魚を眺めるような感覚で他人を眺められるのは、割と気楽で、ストレスが少ない。

 マスクの下の表情が見えないのも、楽だ。相手のことを嫌いでも、目だけ笑ってしまえばいい。

 そういうことを言っている時点でわかると思うけど、私はコミュ障だ。人間が嫌い。

 適当にやっていたら、「それは不誠実だよ」って怒ってくる人が嫌い。仕事は手を抜いていないのだからいいじゃないか。


 外界との隔離の意味では、眼鏡も好きだ。観察する側になれるから。コンタクトレンズでは味わえない、あの観測者としての感覚。

 そういうものに、私は魅力を感じる。


 でも、好きなマスクも、強要されると面倒だ。強要されると面倒なので、誰もいない帰り道ではマスクを外して、外の空気を吸いこんでいる。

 なんて矛盾している。

 矛盾こそが人間のおもしろさであるとも思うので、いいかな。


 まあ、新型コロナウイルスが流行ってなかろうが、花粉症でマスクが手放せないのだが。

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