勇者の妹、魔王の姉…そして俺は「タダ」の村人

「おお! よくぞ きた! ゆうしゃよ ここツセデンのむらだ」

「…………」

「おれは ここに すんでいる むらびとだ」

「あの…やめてもらっていいですか……兄さん」


その一言を聞いて、俺は動きはピタッと止まる


「俺を…兄と呼ぶなーーーー!!」

「………はぁ」


そんな俺を冷ややかな目で呆れている少女…彼女は勇者である。


「そして俺はただの村人!! 兄ではない!! さてあらためて…勇者よ まおうとたたかうには ・・・」

「いや、もうそれはいいですから」


そういって言葉を遮られた…おい!! 人のセリフを邪魔をするなよ! マナー違反だろ!


「話を聞いてくれ! 勇者よ!!」

「いやだから、そういうのいいですから」


対応がクールすぎる!!


「いい加減名前で呼んでくれませんか…その…アイシャと…」

「お前は勇者だろ? 何を言っているんだ」

「………ええそうですか…」


なぜか不機嫌になった気がする…


「それより兄さんいい加減考えてくれましたか?…私のパーティーに入ってくれることを…」

「いえ…? お断りしますけど」

「……理由をお聞きしてもよろしいですか…」


ぷくーーーーーーーーっ!

そんな音が聞こえそうなくらい彼女の頬は膨れてこちらをにらんでいた。


「おいおい、俺はただの村人だぜ」

「私より剣の腕は強いじゃないですか」

「剣術最強と言われているお前より強いわけないだろ」

「私に剣術を教えてくれたのは兄さんですよ?」

「村人じゃあ勇者パーティ―なんてふさわしくない!!」

「……兄さんだからついてきてほしいのに…」


んっ? 最後だけ聞きづらかったぞ


「た、大変だーーー!!」


あれは…俺と同じ村人のBさん!


「おーいどうしたんですか?」

「お、お前か! 魔王軍が攻めてきたんだ」

「なんだと!! この村にか!?」

「このままじゃ村が襲われる!! 逃げないと!」

「そんな…このままでは…襲われる!」

「「ひええええ~~~」」

「…………」


怯える俺とB君を冷めた目で見てくる勇者…


「おっやっとみつけた~」


女性の声が響く、声の方向には豪華な装飾している黒いドレスを着た女の人だった。


「ま、魔王だ~!!」


Bくんはそそくさと逃げていく…そう、この女性こそ魔王にして…


「むーくん、アーちゃんひさしぶり~」


俺たちの姉である……


俺たちの一族は勇者にまつわる家で妹は勇者に、姉は賢者として育てられていた…俺? 俺の事は置いておいて…ともかくお堅い家だったわけだ、姉はそんなしきたりが嫌になったのか家でして冒険者になったらしい

しかしどうやら旅の中で偶然魔王を倒してしまったらしい、魔王軍にスカウトそのまま魔王になったようだ…


「ねぇねぇむーくん、あのことについては考えてくれた?」

「あのこと?」

「も~私のもとに来ない?って話」

「………!」


それは伝説の…世界の半分ってやつでは…いやしかし…おれむらびとぉぉぉぉぉぉ


「断る!」

「え~どうして~」

「アイム!タダの村人!!」

「ぶーぶー 一緒に魔法研究した仲なのに~」

「村人に魔法使い最強のあなたに勝てるわけはないがな!?」

「あははっ相変わらずむー君は変わらないね」


魔王が朗らかに笑っている中、勇者は剣を抜いていた。


「ねえさ…いや魔王、覚悟してください…」

「あれ? どうしたのあーちゃん」

「その呼び方をしないでください!…私は勇者としての使命を果たすまでです」

「もうどうしたの~堅いお顔をして~スマイルスマイル~」

「ふざけないでください」

「……まぁしかたないか」


剣を魔王に構える勇者、魔王も同じく杖を構えるお互いにらみ合った直後に勇者が動き出す。


目にも止まらない速さで魔王に近づいて剣をふるう、剣が魔王に当たる瞬間に魔力でできた壁が作られていて勇者の攻撃は止められた、勇者はすぐに離れて距離を取って、魔王は魔法で宙に浮くそしてその周囲に魔力でできた球が宙を浮く


「………」

「相変わらずやるねぇ…勇者」


表情は変わらずに話しかける魔王、そんな魔王をにらみつける勇者

二人の実力は同じくらい、このままでは闘いが長引き村が壊れてしまう…! そんなことは…


「…いきます」

「こっちこそ…」


二人は激突しあう…俺は…


「やめろーーーー!!」


二人を止めていた、勇者の剣は俺の剣で…魔王の魔法には俺の魔法で…


「……!」

「やっぱりすごいね、むー君…ねぇ配下になってよ」


そのまま魔王が俺の腕に抱き着く


「なっ…! 兄さんはわ、私のパーティーに入るんです!!」


勇者は反対の腕に抱き着く。


「わ~お大胆」

「うるさいですよ…兄さん…答えは?」

「断る!!村人だからな」


勇者が呆れて、魔王が笑う…そう俺は…



「タダ」の村人だからな!!

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短編集 九太郎 @Ninetarou

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