第3話 無意識

朝、起きた。疲れが全然とれていない。なんだこれ。

また夢を見たんだな。

大抵の場合、僕は見た夢がどんな内容だったかを思い出しながら学校に行く準備をする。


夢の世界は普通の街。とはいえここがどの街なのかは分からない。絶妙に建物のバランスも悪い。夢には自分が見た事のあるものしか出てこないらしい。きっと自分が見たことのある建物の1部1部を繋ぎ合わせて出来た街なんだろう。

そこには1人の同じ年の女子がいた。

同じクラスの楠山 彩。

うわぁ…苦手なんだよなこの人。

僕は中学時代に少々虐められていた。その虐めの根幹にいたのがこの女子だ。

今はそのことも反省したのかあまり絡んでこない。

僕は楠山を避けるように反対方向に向かって歩いた。

すると楠山はまるで僕の動きをコピーしたかのように歩き出した。いやいや来るな来るな。

走った。逃げるように。

上手く走れないな。さすが夢。

なんて言ってる場合か。過去のトラウマが蘇って、胸糞の悪い夢になってしまう。逃げろ。

目の前に踏切があった。あったというか都合良く発生したというか。

この踏切に引っかかったら捕まってしまうと思い急いだ。そして渡れた。渡ったと同時にカンカンカンカンとやかましい音がなった。踏切が閉じてしまえばこっちのものだ。閉じろ閉じろ!

閉じた。

閉じたのだ。

誰が見ても閉じたと言うだろう。

なのに楠山はそんなことも気にせず線路に入り追いかけてきた。怖すぎだろ。

そしてまた逃げようとした時。

バーーン。

大きな音が鳴った。

振り返ると血と肉片と骨が舞っていた。

轢かれたのだ。電車に。楠山が。

映像はリアルで鮮明でグロい。

なのに動揺はなかった。夢だからだろう。

なんなら何となく心がスカッとしていた。

いくら夢の中とはいえ虐めてきていたやつが死ぬのを見るのは気持ちのいいものなのかもしれない。

そんなことはないか。

スカッとした気分も一瞬で今度は辛くなった。

僕から見た楠山は嫌な奴でも、楠山もきっと誰かの特別なのだ。

なんて、夢だから考えても無駄か。


またまた変な夢を見てたんだな。僕は。

やれやれと、いった表情で賢介と登校。


その日から楠山は来なくなっていた。

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