第8話 魔王はリベンジする

 俺はアインハルト。最近は色々できるようになった村人である。


 俺は勇者の逸話に基づいた『光を放つ剣』を装備すると決めていた。

 しかし、『光を放つ剣』は独学の魔法技術では再現することができなかった。そのため、錬金術を用いた再現となった。

 そうして、できたものが『光の剣もどき』だ。

 効果は魔力を通すと少し輝くことだ。

 この結果から、より強力な魔法や素材を取集することが目標となる。この問題点や過去の問題点をまとめると以下の点になる。


1. 事前に解析することで行く副作用を抑えることができたこと。

2. 勇者であろう存在の魔法出力は高く、弱い魔法であっても本職と同程度の出力になること。

3. あまりにも大きな副作用の場合は肉体が変質する可能性があるということ。

5. より強力な魔法を身に付けること。

6. 錬金術に耐えることのできる素材を採取すること。


 本日は素材採取と強力な魔法を覚えることとした。

 レオナとの約束があったため、草原へと向かっていた。すると、父とミミ、そしてミミの父であるおじさんがいた。


「ハルト、レオナちゃんと何をしていたんだ?」

「何でもないよ父さん「私が魔法を教えてあげようとしていたの!」」

「ふむ、魔法か。ちなみに何を教えようとしていたんだい?」

「ひ、あっ!「俺の知らない生活魔法ですよ」」


 俺の前に飛び出していったレオナの背中をつねり制止する。

 恨みがましい目でこちらを見てくるが無視して話を進める。


「父さんたちはミミとどこに行くの?」

「森に錬金術の素材を取りに行くらしくてな。その案内をするところだ」

「君たちも一緒に行くかい?」

「良いんですか?」

「もちろん、今回取りに行くのは君の授業のためのものだからね。それに採取の方法もまとめて教えることができてお得さ」

「それはありがとうございます」


 こうして、5人で探索をすることとなったのだが。

 何かに祟られているからなのかわからないが、森に向かえば問題が起こる。

 今日はまだかわいいもので、レオナとミミの仲があまりよくなりにくい程度だ。


「レオナ、歩きながらで良いから簡単な魔法を教えてくれないか?」

「!うん、もちろん!」

「あたしなら生活魔法じゃなくて、属性魔法を教えられるわよ!」

「む!そ、それも気に痛」

「むーー!」


 振り向くと背中をつねり、むくれた顔をしたレオナがいた。

 前には自慢げに胸を張るミミがいる。


「ま、まずはレオナから教えてくれ」

「うん、わかった!」

「ふん!」


 なんとも言い難い雰囲気となった。

 俺は無言で『未完成:真実の瞳』を発動させた。

 レオナが横にやってきて、手を振りながら説明を始める。


「私が教えるのは、一番最初に覚えた光の魔法『ライト』だよ!」

「プチライトの上位版か?」

「ふふん、まあ見てて。ライト!」


 手の先に光の玉が現れる。

 次の瞬間、手の延長線上にあった木の棒の真ん中あたりが消し飛んでいた。


「すごいでしょ!」

「ふむ、こうか」


 俺は両手を前に突き出すとライトを発動させる。

 効果を確かめるために少し時間を置き、射出する。すると、木の棒の残りを消滅させた。


「......私、制御できるまで時間かかったのに」

「......なんかすまん」


 先ほどとはまた別の意味で雰囲気が悪くなったのを感じつつミミに声をかけた。


「次は属性魔法を教えてくれ」

「すごいの見せてやるわ!『ファイア』『アクア』『ウィンド』『アース』!」


 四つの属性が付与された玉が浮かび、消えていく。


「発動させずに消すことで、周りに影響を出さないやり方になるのよ」

「こうだな」


 掌に四つの玉を浮かべ、握りつぶすようにして消滅させる。


「?属性が消える瞬間になにか」

「......あたし、これできるようになったの1年かかったのに」

「......な、なんかすまん」


 さらに重苦しい雰囲気になったところで助け舟が来た。


「ハルト!みんないるな!帰るぞ!」

「父さんどうしたの?」

「今はそn......い、いや何もない。早く村に帰ろう」

「わかったよ」

「......怒鳴ってすまんかったな」

「いいよ。急ぎでしょ?」

「ああ」


 父との雰囲気も悪くなったが、それ以上に張り詰めた気配が漂っている。

 村に帰る道中に、事情を知るレオナに様子を見てもらいながら魔法を作成していく。


「先ほど魔法をかき消した時にモヤが見えたんだ」

「モヤ、そんなのあった?」

「これだ」


 先ほどと同じく、目の前で握り消滅させる。


「何も見えないけど......?」

「『未完成:真実の瞳』で魔力を見たからか」

「あんたたち何の話をしてるの?」

「ハルトが魔法を作ってるの」

「へえ~!面白そうじゃない。私も混ぜて!」


 二人に挟まれて両手のひらで複数の小さな玉を浮かばせ互いにぶつけていく。


「な、ナニコレ。人のできる技じゃない」

「そうなの?私もできるよ!ほら!」

「......ごめん。私の理解不足だわ」

「これは、対となる属性がぶつかったときに生じる影なのか。これはまた違う使い方がありそうだ」


 生じた影は魔力を通わすことによって動かせることが分かった。だが、影単体を生み出して制御することができないことが分かった。影を得るには、違う属性の魔力を簡易的に生成できればいいことが分かっている。これは錬金術で何とかできそうだが、影を操るのは俺という問題点がある。

 現状できる方法としては、影を簡単に操る方法を身に付けることだろう。


「勇者模倣魔法の時は失敗したが今回は失敗しない」


 影の動きを捕捉し、球体となり安定するまで調整し続ける。

 また、影の生成時の状況を記憶していく。


「何それ、黒い玉?」

「それが新しい能力なの?」

「ああ。これが新しい魔法『シャドー』だ」


 影は属性魔法の魔力を吸収し、消す効果を有している様だった。

 前回の失敗と比べると、失敗らしい失敗はない。

 前回のリベンジができたと言っても過言ではないだろう。


「レオナ。前回みたいな失敗はしなかったよ」

「そうだけど、でも一人でやるのはダメだからね」

「わかったよ」


 村につくまでの間の出来事だったが、とても価値のある時間だった。

 魔法を打ち消す、防御に使える魔法を手に入れた。

 これで少しは強くなれているだろう。


 俺は勇者になるんだ。


 アインハルト、初期の光の魔法と属性魔法、影の魔法『シャドー』を獲得。


__________


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