第5話 魔王は勇者を計測する
俺はアインハルト。
昨日は『計量計測魔法』の開発を行った。だが、残っている問題点は数多く存在する。
問題点は以下のとおりである。
1. 事前に解析することで行く副作用を抑えることができたこと。
2. 勇者であろう存在の魔法出力は高く、弱い魔法であっても本職と同程度の出力になること。
3. あまりにも大きな副作用の場合は肉体が変質する可能性があるということ。
本日は勇者や村人などの魔力量を計測し、1 Manaの値を求めることから始める。
なぜ、これを今日行うのかというと、
「今日は森に薬草を取りに行くぞ」
「父さん、俺も行かなくちゃいけないのか?」
「薬が足りなくなったから量が欲しいんだ。それにハルトもそろそろ採集のやり方を身に着けておくべきだからな」
「なるほど。レオナも連れて行っていいか?」
「あ~、向こうの親御さんが良いと言ったらいいぞ」
「わかった聞いてく__「私の両親は行っていいらしいです!」なぜいる?」
「俺が聞いて来よう。ハルトたちはかごの準備をしておいてくれ」
「わかった。レオナこっちに来て」
「うん!なんでもやるよ!」
こういう事情だ。
早速、計測を開始する。
父や母の魔力量は俺やレオナの魔力量と比べてはるかに小さい。レオナに関しても俺よりも少し小さいのがわかる。
村人に関しても俺やレオナほどの魔力量を持つ存在はいないだろう。
「あ、ハルト。そういえばそろそろ錬金術師の一家が引っ越してくるらしいから顔合わせに行くことを覚えておいてね」
「わかったよ母さん。今日は森に行くからうさぎを取ってくるよ」
「目の色も変わってしまったし、本当に気を付けるのよ」
「私がいるから大丈夫ですよ!」
「あら、頼もしい騎士様だこと」
「ふふん、勇者な私にお任せです!」
会話を横目に村人を眺めていたがやはり魔力量は少ない。
村人の魔力量を1 Manaとするなら、俺が約100 Mana。レオナは約70 Mana程度であることが分かった。
~~~~~
そんなこんなで、森に行ったわけだが。
父とはぐれてしまい、レオナと二人で森を走り回っている。
後ろには数頭の狼。前にはレオナ、俺の手を引いている。
「はぁはぁ、レオナ、置いて行っていいぞ」
「やだ!まだ走れるもん!村に着いたら助かるもん!」
「いや、俺が、きつい」
「大丈夫!大丈夫だから!」
さっきからこの調子である。
レオナは体力があるが、俺には全く体力がない。
魔力量は野生生物は2~5 Mana程度であることが分かった。
魔法による
「きゃッ!」
そんなことを考えていると、木の根に足を取られてしまいレオナは転んでしまった。
狼の数は3体、もう追いついた。
「早く逃げて!私は大丈夫だから!」
レオナは優しいな。
勇者は誰に対しても優しいといった記載があったが、事実なのかもしれない。
そして、それを
「俺はレオナを見捨てないよ。なぜなら、俺は勇者になるのだから」
「ハルト......」
レオナを背後に、狼と向かいあう。
『未完成:真実の瞳』は森に入った時から発動していたので、この三頭の狼の特徴は把握しており、弱点も
飛び掛かる狼に対し人でいう人中に拳を当てていく。狼の動きや速度はどれも見切れるものであり、生活魔法であるプチライト(一瞬、小さな明かりをともす)やティンダー(一瞬、小さな火の粉を生み出す)で視界を奪い、
こうして、攻撃を続けていくと、やがて1匹の狼が動きを止め、残りの2体は去っていった。
「予想通りの戦果だな」
「あ、ありがとう」
「レオナ、こちらこそありがとうと言うべきだ。レオナが居たから、俺は守るという選択ができた」
尻もちをついたままの彼女に視線を合わせるために屈み、本心を告げた。
彼女が居なければ、勇者は他者を守るもの。決して人を見捨てずに、最後まで努力するということを学べたのだから。
「み、見ちゃダメ!」
「?どうした、どこか痛むのか?」
「かっこいいから......と、とにかく見ちゃダメなの!」
うまく聞き取れなかったが、見てはいけないとのことなので背を向けた。
おそらく、この
「そろそろ、大丈夫か?」
「う、うん。も、戻ろう?」
「そうだな、狼も運ぼう。歩けるか」
「ファーストエイド(怪我に対して応急処置する)。うん!勇者レオナ復活!」
「さっきこけてたけどな」
「も、もう!それはいいの!行くよ!」
以前は守って貰ったが、魔王な俺だって他者を守れるんだ。
これは、少しは強くなったということだろうか。
俺は、勇者になれるんだ。
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