第4話 魔王は『計量計測魔法』を開発する

 俺はアインハルト。勇者を目指す魔王である。


 午前に勇者を模倣もほうした魔法『未完成:真実の瞳』を制作したのだが、反省点が多かった。


 反省点と学んだ点は以下のとおりである。


1. 事前に解析することで副作用を抑えることができたこと。

2. 不可思議ふかしぎな魔力を計測するための方法を得ること。

3. 勇者であろう存在の魔法出力は高く、弱い魔法であっても本職と同程度の出力になること。

4. あまりにも大きな副作用ふくさようの場合は肉体が変質する可能性があるということ。


 1番、3番、4番に関しては対応策が思い浮かばないので先送りとなるが、2番に関しては『未完成:真実の瞳』を活用すれば可能だと考えられる。

 あまりにもアナログな方法だが大きさや重さを数値化し、目測で判断していく方法だ。アナログだが計測方法をより高度なものに変換するまでの間の一時的な方法となるが、無いよりはマシといったところだ。

 この計測方法を確定したいところだが、


「おままごとか」

「うん、午後は私に付き合ってよ!」

「もちろん構わない。だが俺が夫でレオナが妻という、二人だけのおままごとだが、他の子は誘わなくていいのか?」

「楽しいからいいの!それに他の子に見せたくないし」

「そうか」


 レオナはおそらく、俺の変質してしまった瞳を気にして言ってくれているのだろう。彼女は昔から他者に対してとても優しく、信頼されていた。村の人々からも話かけられ、取れたての野菜などを分けてもらうことがあった。

 勇者の伝承にある「勇者はすべての人の心に光をもたらし、敵であろうとも許しを与えた」の信条を体現しているのだ。

 俺も見習って心の広い人間にならなければならないと痛感つうかんするのだった。


「おかえりなさいあなた!今日も一日畑仕事を頑張ったのね!」

「ああ、そうだな」

「暖かいお湯を桶にんでおいたから洗い場に服を入れて体をふいておいてね!」

「魅力的な提案だ」

「ふふん、できる奥さんはできるんだよ!」

「ああ、魅力的みりょくてきだな」

「え?そそそ、んにゃ!あ、あなたが望むなら__」


 脳死のうし状態の会話を半自動的に続ける。

 しかし、口とは裏腹うらはらに脳内では計測方法の確立を急いでいた。

 先だっては数値化に関しては(現代的な指標しひょうに変換します)重量に関してはg。距離に関してはm。などを用いていく。

 魔力量の単位はManaを用いる。


「あ、あなたは......こ、こどもは欲しいですか」

「ああ、そうだな」

「だ、だよにぇ!わ、私も欲しいと思うの」

「ああ、そうだな」

「ぴぇ!う、うん。私も覚悟するよ__」


 大体の質量と大きさから、距離と重さは確定した。しかし、目測では包丁と木の棒の大きさが一緒だが重量が違うことが分かった。目測ではダメだ。より確実な方法でないと。


「わ、わたし。クリーンの魔法で体をきれいにするんじゃなくて、きちんと毎日お湯を入れた桶を用意して帰りを待つよ!」

「とても魅力的だな」

「うん!魔力量は多いから、そのぐらいならへっちゃらだもん!」

「その手があったか」

「あ、疲れた旦那様に魔法は使わせないんだから!__」


 お湯、水での計測......いや!魔力量が多いなら魔力の質量と比較して計測すればいいのか!

 心まで読んで提案するとは、勇者とはすさまじいものだ。

 『未完成:真実の瞳』に魔力を視認できる機能を付加すればより分かりやすくなった。


「眼をそんなに輝かせてどうしたの?」

「ん?俺の眼は輝いているのか?」

「う、うん。赤くて、野性的でかっこいいよ」

「そうか。ありがとう。ところで、なんでそんなに顔が赤いんだ?」

「わ、わたしと。け、結婚してくれる?」

「?おままごとでは夫婦だろ?」

「そ、そうだね!おままごと、おままごとだもん!えい!」

「急に殴らないで痛い」

「しらないもん!帰る!」


 急に俺の胸に拳を『ぽかっ』と叩きこんだ。

 そして、赤い顔にこれでもかと不機嫌さを浮かべ、そっぽを向き扉から出ていった。

 一体何だったのだろうか?

 しかし、勇者になるための一歩を進められた。

 俺は勇者になるんだ。


 アインハルト、解析魔法『計量けいりょう計測けいそく魔法』を獲得かくとく


__________


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