第2話 魔王の隣に勇者あり

 俺はアインハルト。魔王である。

 現在は神殿から出て友人を待っていた。


「しっかし、薄暗うすぐらくなってきたな」

「もしかしたら魔王が現れたのかもな」

「そんなおとぎ話みたいなことがあるわけないだろ」


 二人組の村人がそんなことを言い、笑いながら横を過ぎ去っていった。

 大正解である。

 彼らはすぐそばに魔王がいることを知らないだろう。


「おまたせハルト!」

「別にそんなに待ってねーよ」

「でも待っててくれてありがと!」


 この元気はつらつな少女はレオナ。幼馴染おさななじみである。

 幼いころから近隣きんりんにおり、親同士の中が良いことから何をするにも一緒にいるといった具合だ。

 日中はほぼ一緒にいる。そんな存在だ。

 俺は神殿での出来事できごと報告ほうこくした。


「俺、勇者にはなれなかったけど、勇者になるわ」

「勇者じゃないのになれるの?」

「いいや。職業の勇者は目指せないかもしれない。だが俺は勇者になる」

「,,,,,,?よくわかんないけど、頑張ってね」

「ああ。ちなみにレオナはなんの職業になったんだ?」

「私は勇者だよ!」

「は?」


 どうも幼馴染は勇者となったようだ。意味わからん。

 俺の知る勇者という存在は超常ちょうじょう減少げんしょうを巻き起こし、悪を討つ存在だ。この幼馴染おさななじみはどちらかというと、問題を引き起こし幸運でくつがえす存在だ。ある意味では勇者のようではあるが、おとぎ話の勇者とはかけ離れた存在である。

 勇者、俺はなれなかったのに。

 いや、俺は勇者になるんだ。


「信じられないの?実は私は強いんだよ!」

「チャンバラごっこでかったことあったっけ?」

「そんなの一回もないよ!」

「今日も元気良いな」

「えへへ、急にほめないでよ~」


 こいつは知らないかもしれないが、チャンバラごっこ中に急に体制を崩したときは足元がなぜかぬかるんでいたり、砂が目に入ったり、枝が頭に落ちてきたりと自然が守っているかのような現象が起こっていた。

 もし仮に、彼女が勇者であるなら。この自然を味方につけるという能力は勇者に必要な能力なのかもしれない。

 勇者の力の根源こんげんは、彼女を見ていれば理解できるのかもしれない。


「俺、お前にずっとついていくよ」

「ふぇ?......きゅ、急に何を言うの?」

「だから、お前について行ってやるよ」

「......ず、ずっとついてきてね?」

「ああ、任せろ」


 彼女が勇者であるならばこんな優良なサンプルは放ってはおけない。

 俺が勇者になるために必要な最低条件さいていじょうけんを知ることができるかもしれないのだから、こんなチャンスは放っておくことはできないだろう。

 彼女の行動から俺のとるべき行動方針を決め、確実に強くなる方法で最強の勇者になろう。

 顔を赤く染め、帰るそぶりを見せない彼女。


「レオナ、今日は帰るよ」

「え?う、うん。そうだよね薄暗うすぐらいし帰ろう!送っていくよ!」

「いや、ここは男の俺が送るべきところなんじゃ?」

「いいの!勇者の私に任せなさい!」


 こうして彼女に家まで送ってもらい、自室に入って考え事をする。村人な我が家では夕飯のあとは油を消費しないためにすぐ寝ることとなるのだが、この夜は俺の行動指針こうどうししんを決めるために夜更よふかしをしてしまった。

 とりあえず決めたことは。


1. 勇者となること

2. 勇者の力の根源こんげんを知る


 この二つである。

 とりあえず勇者の代名詞だいめいしである相手の力量りきりょうや攻撃、状態異常じょうたいいじょう見極みきわめる慧眼けいがんを身に着けることから始めよう。


「名付けて『真実のひとみ』といったところか」


 俺の明日は早い。


__________


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