勇者にあこがれ軌跡をたどる~魔王適正100%の俺が全てを薙ぎ倒し勇者になる~

AlphaPod

第1話 魔王のあこがれははるか遠く

 とある村の一角いっかくで生まれた少年、アインハルト。

 彼は、おさないころから聞いていた物語があった。

 伝説でんせつの勇者、ギルベルトの物語だ。

 勇者が魔王によって連れ去られた姫を助け、結ばれる。よくある単純たんじゅんな物語だ。この物語には、伝承でんしょうには勇者がとんでもない力の持ち主である描写びょうしゃが多く記載きさいされていた。

 いわく「剣をふるうたびに大地に光がち、魔物まものを消し去った」。いわく「大陸を縦横無尽じゅうおうむじんけ、同時に行われた魔王軍まおうぐん進行しんこうを食い止めた」。いわく「背中せなかには大きな光の円環えんかんを背負い、人々にいやしをもたらした」。

 このように現実ではありえない行動こうどう多々たた記載きさいされた伝承でんしょうである。

 たとえ、一流いちりゅうの剣士が剣を振ったとしても、せいぜい風を切り程度ていどだろう。

 たとえ、たぐいまれなる健脚けんきゃくゆうしたとしても、一生涯いっしょうがいをかけたとしても大陸はわたり切れないだろう。

 たとえ、聖人せいじん認定にんていされた聖職者せいしょくしゃが手をかざし傷をいやすことができたとしても、存在そんざいするだけで他者たしゃいやすことはできないだろう。


 ありえない。しかし、そんな存在そんざいにあこがれてしまったのだ。心惹こころひかれてしまったのだ。


「そうだ、俺は勇者になりたかったんだ」


 目の前の現状げんじょう否定ひていするようにつぶやく。たとえ、現実が変わらないとしても。

 神殿しんでんでの職業しょくぎょう適性てきせい判定はんていする空間。才覚さいかくしらせ、無駄むだがなく効率的こうりつてきな人生を送るように設計せっけいされた空間くうかん自分じぶんから口外こうがいしないかぎり、神と人との契約けいやくにより、決して他者たしゃに知られない情報じょうほう


~~~~~


名前:アインハルト

職業:無職


転職:魔王


~~~~~


 通常つうじょう選択肢せんんたくし無数むすう存在そんざいするといわれている。

 ただし、本当に適正てきせいがある職業に関しては数個にしぼられるという話は聞きおよんでいた。まさかアインハルト自身じしんがそんな存在そんざいであるとは思っていなかったが。


「まさか魔王とは、知られるとどうなることやら」


 世界をやみしずめ、大量の魔物を生み出した”悪の覇者はしゃ”である。

 当然、処刑しょけいは確定である。しかし、ここは神殿の空間でありネズミ一匹ですら入れない空間であるため、知られる心配はないのだ。おそらく、処刑しょけいの心配は無い、はずである。

 勇者と並ぶ魔王の適正。これが与えられた才能。

 つまり、


「俺は勇者になれる」


 こうして魔王に転職したことでアインハルトの物語は始まった。

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