リシアの道具屋②
「あるっすよ。ヤットコ。でも、宝飾屋になんの関係があるんすか?」
ダメ元できいてみたら、あっさりそういってお店の奥へと引っ込むリシア君。
別に敬語でなくてよかったんだけれど、リシア君は、そうはいかないっす、って敬語に戻ってしまった。
ついでに、リシアさんって呼んでいたら、気持ち悪いので呼び捨てで構わないと言われ、でもそれは私が違和感を感じてしまって、結局、リシア君に落ち着いた。
セレスタやジェードは全然呼び捨てにできるんだけれど、なんでかねぇ。
何はともあれ、ヤットコがあるのはありがたい。
やっぱり餅は餅屋だね。
……なんて、思っていたのだけれど。
「そっちかぁ」
リシア君の持ってきた道具に私は膝から崩れ落ちる。
「えっ? どうしたんすか?」
「それもヤットコだけど、そうじゃない……」
「はい?」
リシア君が持ってきてくれたのは確かにヤットコだった。
でも、アクセサリー用ではなく工具の方。
そっちじゃチェーンがつぶれちゃうよ。
「アクセサリーのチェーンを摘まむような、もっと小さいものが欲しいんだけど」
マダムに見せたメモ用紙をリシア君にも見せてみる。
「なんすか、これ? ってか、アクセサリーのチェーンを摘まむ? なんでまた?」
完全に目が点状態のリシア君に何度目かの説明を繰り返す。
「なるほどねぇ。……申し訳ないっすけど、見たことないっす」
「リシアが知らないならこの町にはないな」
「ホタルさん、この町でリシアより道具関係に詳しい人はいないよ。……っていうか、リシアが知らないならシラーデン王国内にはないかも」
セレスタの言葉にリシア君が慌てて手を振る。
「そんな、王国内にないかもなんて大袈裟っす。俺の知らない道具もあるかもだし」
「いやいや、道具限定ならリシアの知識は相当なものだよ。王国内でもここにしかないオリジナルの道具とかも多いしね」
「そっか、若いのにすごいんだね」
驚く私にリシア君は更に大きく手を振る。耳が真っ赤でちょっと可愛い。
「少し、お店を見せてもらっていいかな。代わりになるような道具を探してみたいんだけど」
「もちろんっす。店の奥にしまっているのもあるんで、よさそうなのがないか俺もみてきますね」
どちらかというと最初からヤットコはないだろうと思っていたから、正直それに関してはさほどショックでもなかった私はリシア君に了解をもらって店内を歩き回る。
大小様々な道具が所狭しと並んでいて、見ているだけで楽しい。
中には知らない道具もたくさんあって、一つ一つ説明を聞きたいけれど、今日は時間がないので諦める。
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