真実のテスラコイル

「適当に座っておくれ」

店の奥には小さなキッチンとテーブルの置かれた休憩スペースがあった。

木目の美しいテーブルにティーカップが三脚置かれ、ティーカップと同じ柄の大皿に盛られたクッキーも置かれる。

「ちょっと取ってくるから、お茶でも飲んで待ってな」

そう言ってマダムは二階へと続く階段を上り姿を消してしまった。


「さっきはごめんね。話が急すぎたね」

申し訳なさそうな顔をするセレスタに私は首を振る。

「私も急に大きな声を出してごめんなさい」


「よければお茶どうぞ。クッキーも。変なものじゃないし、おいしいよ」

そう言ってセレスタは大皿のクッキーに手を伸ばす。

果たして口にして大丈夫なものかと一瞬悩んだが、ジェードもティーカップに口をつけているのを見て、私もお茶を口にする。

ふわりと香る紅茶にほぅっと思わずため息がもれる。

大皿のクッキーにも手を伸ばし、ナッツがたっぷり入ったそれを一口齧る。

ナッツの香ばしさとクッキー生地のさっくりとした甘さが絶妙だ。


「お気に召したみたいで良かった」

知らぬ間にどんな顔をしていたんだろう。

セレスタが私に向かってにっこりと笑った。


「少しは落ち着いたみたいだし、話を聞いてもらっていいか?」

ジェードがティーカップを置き、真面目な顔でこちらを見る。

「はい」

私もティーカップを置いてジェードを見つめ返した。


「ここはタキという町で、セレスタと俺はここの領主様に雇われている警備隊だ」

「タキ……って、どこ?」

ジェードに、とりあえず最後まで話を聞いて欲しい、と言われとりあえず頷く。

「俺たちが領主様の土地の見回りをしていたら、お庭の真ん中にホタルが立っていたんだ。周りには他に誰もいなかったし、馬もなかった。正直、戸惑っている。領主様を狙った刺客とも思えないが、だからと言ってお前を不審者でないとはとても言えない」


「で、これの出番というわけさ」

そう言いながら階段を下りてきたマダムの手には丸いガラス玉のようなものが抱えられていた。

ガラス玉の中で紫の光が四方八方に走っている。

これって……


「テスラコイル?」

思わず呟いた私にセレスタが不思議そうな顔をする。

「テスラコイル? これは真実の玉だよ」

「真実の玉?」

セレスタの言葉に今度は私が不思議そうな顔をする。

マダムの手にあるソレはどう見てもテスラコイルだけれど、どうやら違うものらしい。


「そう、真実の玉。この玉に手をあてて、質問に答えてもらう」

「えっ? 嘘つくと電撃が走って死んじゃうとかそう言うやつ?」

嫌な予感に私は慄く。

嫌だよ。そんなのに手を置くの。

嘘つくつもりないけれど、嘘つかなくても電撃が走らない保障なんてどこにもないじゃないか。


「そんな物騒なものなわけないだろ」

怯える私にジェードが呆れた声をあげる。


「本当なら青、嘘なら赤に玉の中の稲妻が光るんだよ。それだけで人体に影響はないから大丈夫」

セレスタの言葉にホッとしたのも束の間。

続く言葉に私は顔色を失った。


「ただ、結果次第ではどうなるか……だから嘘はつかないでね」

にっこり笑うセレスタに私は全力で頷いた。

……この子、やっぱり怖いよ~。

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