第三章の三 神の加護②
「あずさちゃん、凄いわね! あの
奏は感服した様子であずさに言う。あずさは、一度会っていたからね、と答えた。
「アマテラスにお目通しが叶うなんて、よっぽどのことですよ、あずさ」
結人が驚いたように言う。あずさは、ん~と唸ると、
「色々あったんだよ。夏にね」
と言うだけだった。結人はあずさが何故アマテラスと面識があったのかを知らない。とにかく夏に何かがあった、と言うことしか分からなかった。
そもそも、アマテラスとツクヨミは仲が悪かったはずだ。アマテラスはツクヨミの顔など見たくない、とそう思っていると結人は思っていた。しかし、二柱の様子はそんなことはないように見えた。きっとその辺りであずさが絡んでいるのだろう、と結人はあたりをつけていた。
「さてと、
ツクヨミの言葉に、あずさが言う。
「どんな神様だったっけ……」
「あずさちゃん、結人くんに襲われたとき、雷と一緒に来てくださった神様よ」
「あぁ、結人がビビッてた」
「ビビッてた、は余計です」
結人は端整な顔をふくれっ面にして反論していた。あずさはしばらく考えたのち、せっかくのアマテラスの紹介なのだから、と会いに行くことにした。
「誰だ」
中からくぐもった声が聞こえてくる。
「ツクヨミだよ」
それに答えたのはツクヨミだった。中から盛大なため息が聞こえてくる。そして、
「入れ」
短く言われて、一同は
「ツクヨミが人間と来た、と言うことは、何かまた面倒ごとなのだろう?」
どうやら、
「人間の傍にいるのは、いつぞやの
「
「して、人間よ。こんなところまで来て一体何用だ? ツクヨミが私に用があるわけではないのだろう?」
「け、契約をお願いしたくて参りました……」
あずさは
「やはり、その件だったか……」
面倒そうに言う
「アマテラスから連絡が来ていた。アイツに言われちゃ、断れねぇよ」
そう言って席を立つ。あずさは驚きの視線を
「これで良いのだろう? 全く、人間はすぐに面倒ごとに巻き込まれるのだな」
呆れ気味に言う
「ありがとうございます!」
「もう用は済んだだろう? さっさと人間界へ戻れ」
「これでいいかな? あずさ」
ツクヨミはにっこり微笑みながら言う。あずさも微笑みながら、ありがとう、と口にする。
こうして、あずさは神々と契約を結んだ。これで
あずさたちはヤタガラスに導かれて、人間界へと帰っていくのだった。
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